安藤先輩からの「至上命令」によって、お互い好きあっているにも関わらず付き合うことのできない
岡田君と阿部さん。とはいっても年頃の二人にそんな制約は何の意味もなく、岡田君は自室に阿
部さんをはじめて招くことに。ところが思いのほか、アパートの階段にはあの人が…
やばい、やばいぞ。本気で作品が“やつ”に乗っ取られようとしている。だれかって?いうまでもなく
それは、主人公・岡田君の立派なセンパイ、安藤によってだ。この極端な思考回路、まるであの壁
にぶつかれば自動的に方向を変えて突っ走り続けるチョロQのような、のたうちまわっているのがそ
のまま人生というひとつの道になっているこの男の生き方は、かなり画になっている。
女にだまされたことでピュアを捨てると宣言し、まるで関係のないブスな女性を好きだと嘘ついて残
虐になろうとするありさまとか、どーーーみてもまちがっているのだけれど、その極端なやり方に傾斜
してしまう彼の思考回路は、とくにモテない青春を味わった男の多くには共感できてしまうところでは
ないだろうか。みんなフラれた後、一度は「もう恋なんてしない」なんて極端なことを思っちゃうもんなの
だ。この男の底なしの苦悩に比べれば、第一巻の冒頭で思わず共感してしまいそうになった岡田君
の悩みなど、薄味にしか思えなくなってくる。完全に規格外。
その一方で、もう一つのストーリーも着々と進行している。もし自分の性欲が、人を愛することではなく
殺めることによってでしか晴らすことのできないものであるとしたら、どうなるか。すでに臨界点を突破し
て、始終人殺しのことだけを考え続ける狂った男の話は、前段のまるで能天気な恋の話とは全く結び
つきそうにない。だがふたつは、ある決定的に危険な一点をもって、連結しようとしている。男のターゲッ
トは、まさにあの人だったのだ・・・。