グイン・サーガ最新刊です。
といっても、皆様ご存知のとおり栗本薫女史は既に鬼籍に入られておりまして、このグイン・サーガ最新刊は、彼女が生前に各所で発表したものの一つにまとめられていなかったグイン・サーガ関係の短編を集めたものになります。巻末に「氷惑星の戦士」という別枠の短編SFが一つ入っておりますが、それ以外は全てグイン・サーガの外伝です。
グイン・サーガ本編の前章を描いた「前夜」、グイン・サーガハンドブックに特典としてついていた短編「悪魔大祭」「クリスタル・パレス殺人事件 -ナリスの事件簿-」「アレナ通り十番地の精霊」、そして表題作であり最大の問題作品である「ヒプノスの回廊」が収録されています。
それぞれに随分とタッチが随分とちがうところが、時代と、栗本薫女史の多面性を再確認させてくれます。
で、問題の「ヒプノスの回廊」なんですが、これについてはものすごく賛否両論が別れると思います。今回の文庫化の前に、ちょっとしたご縁でこの作品を先に読ませていただける機会が昨年にあり、内容を知ってはいたのですが、その時に思ったのは、この話は逆説的な話になりますが、グインファンであればあるほど読まない方がよいのではないかなぁという事でした。それくらい問題作だと感じました(その「問題」の質は、一部のファンが勘違いしそうなBL系の事ではありません。それはそれでもう別のサーガでまだまだ続きがあるそうです)。
端的にいうと、グイン・サーガの作品世界の中でも最大の謎といっていい、「暁の女神、アウラ・カーの正体」と「グイン本人の正体」がこの話では一応明かされ、グインとアウラの邂逅が描かれるのですが、そのアウラ・カーの存在の正体とグインの正体というのがどちらもなんというかあまり喜ばしいものではないのです。勿論、これは個人の感性の問題ですから、これこそが求めていた解答だという方も中にはおられるかも知れません。しかし、一般的なファンタジーファンや、グイン・ファンにとっては、「こんなのはアウラではない。暁の女神ってこういうものなの??」「グインって結局そういうものなの?」とかなり不満が出るのではないかと思うのです。
勿論、僕はグイン・サーガのファンなので、栗本薫先生が、かくあれかしとこの世界を作るのであれば、それはそれで仕方がないとは思います。それを否定はしませんが、これはちょっとあんまり好みの結末ではないなと思います。
おそらく、栗本先生ご本人もそのあたりの事を予想されて、あくまでこれは夢なのか現実なのか、妄想なのか、分からないという形のオチを残されてはいます。なので、この作品世界内の本当の解答はまた違うものだということもありえます。ただ、あまりにインパクトが大きいし、想像しているものとのギャップが激しいので、この表題作の「ヒプノスの回廊」に関しては、謎は謎で残したい方は封印しておいた方がいいのではないかとさえ思います。
とはいうものの、これで栗本薫先生のグイン・サーガ関係の本はもう出ないのかと思うと感慨深いものがありますので、他の収録作品もありますので購入は是非ともお勧め致します。数十年の間楽しませて続けてくれたグイン・サーガのご本人の最後の一冊ですので、是非とも一つの日本のヒロイックファンタジーの歴史の代表作の最終刊としてお求めいただければと思います。