●ヒトラーをこれほどまでに正面きって描いた作品は、私の知る限りこれまでなかったので、そういう意味でも画期的。反ナチス・反戦という紋切り型の作品ではなく、ひとつの夢の終焉で、人はいかに生き、いかに死ぬものかを訴えている映画だと思います。その意味では、ヒトラーも将軍も周辺のドイツ人たちも人間として等分に描かれているといってよい。史実を丹念に研究した跡も見られるので、映画としては充分な説得力を持つものでしょう。●ちなみに、この映画に登場した現存する唯一の生き残りローフス・ミシュ(Rochus Misch、1917年7月29日‐)は、この映画について大げさすぎると批判的だったそうです。確かに演出過剰な部分は散見されますが、ドキュメンタリーではないのだから、そのあたりは止むを得ないでしょう。●ひとつ肝心なことは、この映画では言語がドイツ語であるということ。これが何にもまさるリアリティを演出しており、ハリウッドでは作れない本物の味を出しています。サンクトペテルブルグ(旧スターリングラード)で撮影されたという不思議な因縁の市街戦ロケも秀逸です。●俳優たちは・・・これはもう素晴らしいのひとことではないでしょうか。ヒトラー、将軍、兵士、秘書、市民、そして子供たちの迫真の演技に拍手! 美し物哀しいサウンドトラックも心に残りました。●2年前、仕事で2週間ほどベルリンに滞在しました。裏通りの古いアパートの壁には当時の銃弾が生々しく残っていましたが、新しいビルがどんどん建って、赤軍が侵攻したティアガルテンの森もブランデンブルグ門も時を知らぬかのようにたたずみ、わずか60年前にこの町で赤軍と独軍の死闘が繰り広げられたことなど、いまでは一条の夢のようです。