EST解析やランダムショットガン法など、ゲノム研究者なら誰でも知っている手法を編み出し、さらには自分の名を冠する研究所を設立してメタゲノム解析やゲノム合成などの新しい分野に今なお挑戦し続けているクレイグ・ベンター。
研究者としては間違いなく超一流ですが、彼に良い印象を抱いている人は少ないと思います。その大きな理由は、ヒトゲノム配列解読のために、セレラ社という企業を率いて公共の国際コンソーシアムと熾烈な競争を繰り広げたことに由来するでしょう。
ですが、彼がそのような行動を取った経緯を知る人は、ゲノム研究者の中でさえほとんどいませんでした。それがこの本には書かれています。私はこの本を読んで彼に対するイメージがだいぶプラスの方に傾きました。
最初の100ページほどが生まれてから研究者として成功するまでの人生について、中-後半の300ページほどがゲノム解読関連の出来事、最後の40ページほどにメタゲノム解析とゲノム合成についておまけ程度に書かれてあります。ワトソンやコリンズなどの公共の国際ヒトゲノムコンソーシアムの主たるメンバー、セレラ社の母体であったパーキンエルマー社の重役達などについては激しく批判しています。人を批判する文章を読むのが苦手な人は読まないほうが良いと思います。
彼個人のゲノムは既に解読されていますが、それについての言及はコラムに少々書いてある程度です。
読む際にゲノムについての知識は必ずしも必要ありませんが、あるとより楽しめます。