極端な食わず嫌いでならす中島義道先生が『偏食的生き方のすすめ』の中で「好き嫌いがないことを自慢するようなノー天気な健康人間には『ならペットを喰えるか!』と聞いてみたい」というよなことが書かれていて、素晴らしいタンカだなと感じたのを思い出すが、この本も、そういった可食圏内と非可食圏内の食物を分ける心理的な要因に関する分析かな、と思ったら、まったく違う。古くは創世神話から新しくは現代日本の下世話なゴシップまで、洋の東西を問わずに雑食を性にした人間たちが織りなしてきた食とセックスに関するもの哀しくも笑いとばすしかないような話をこれでもかとばかりにぶちまけた本だった。
イヌとは10万年ぐらい前に外敵から人間の集団を守る番犬あるいは狩りの忠実な友として活用されてきた家畜だ、みたいな説を信じていた。しかし、山内さん紹介の説によると、最初から人間は喰うために犬を飼っていたらしい。「親を失ったイヌ科の動物の仔を狩人が連れてかえって手なづけ、可愛がって育て、たっぷり肉がついてくると必要に応じて殺して食べていた。子供は人に馴れやすく、また集団のボスに絶対服従をする性質があったら、人間の命令にも従順で、いわば生きた食料貯蔵庫として大いに活用した」(pp.14-15)という。
中国編でさらに凄みが加わる「犬食」の後は猫食、ペットとの性愛(ペッテイングという言葉の発生!)と続く。最後のタブーの仕組みと贈与経済に関する2章は古めかしいが、とにかく、その漢籍も含めての博覧強記ぶりは一読に値する。