生物の細胞の死には、遺伝子に支配されない死「ネクローシス」と、遺伝子に支配された死があり、そのプログラムされた死は、細胞の種類により2種に分けられるそうです。▽再生系の細胞の死「アポトーシス」。▽もう一つは非再生系の細胞(脳の神経細胞や心臓の心筋細胞)の死「アポビオーシス」。「アポトーシス」は、個々の細胞が個体全体を認識し不要な細胞が自ら死んで個体の完全性を保つ生体制御と、ウイルス等で異常をきたした細胞を消去する生体防御がその役割。再生系細胞が「アポトーシス」で死ぬ時は、自分のDNAを規則的に切断、蛋白質を分解して消滅。60回程再生できる。一方「アポビオーシス」は、基本的に再生せず、個体の死に直に関わる。ヒトは、100才程の寿命に決められているそうです。
「アポトーシス」を応用し、難病の癌、エイズ、アルツハイマー病等も、各々の病因となっている特定の蛋白質の構造を突き止め、働きを抑制するために、その構造の鍵穴に合った鍵をもつ化合物を機械で設計する。新薬を創出するゲノム創薬の手法が紹介されています。
なぜ細胞に死がプログラムされているのか。著者によると、細胞の自死は、性と共に現れた。性により違う二個体から新しい遺伝子の組み合わせが生じ種が存続できた。その時、同時に生じる不良品を排除する力。また突然変異が生じた時に、種にとって優れたものだけを残す餞別能力。それを細胞の自死能力が担ってきたと考えられるそうです。細胞は、他である種の全体のために、利他的に自己を消去することで、自己の本来のあり方を全うするように設えられている。個が他である種全体のために利他的にふるまう関係は、目を拡げていけば、個々の細胞と一人の人間、個々の人間たちと地球全体、地球と宇宙全体との関係まで敷衍できると著者は考えています。細胞から宇宙全体まで、最新科学に基づく壮大な生死のドラマが一望できます。