ヒッチコック映画に関して日本で作られた書物で、いまだにこの本をしのぐ本はないと言っていいだろう。監督第1作の1925年の作品「快楽の園」から1976年の最後の作品「ファミリー・プロット」までの全作品が網羅され、冒頭の筈見有弘氏筆の「ヒッチコックの歴史」の欄外では企画のみに終わった作品も簡単に紹介される。26年の「下宿人」以降の各サスペンス作品は文章(ストーリーの紹介が多いが)とスチル写真で最低3頁は解説され、「サイコ」にいたっては14頁に及ぶ。ヒッチコックは自作に必ず1回登場するが、各作品の該当場面もスチル写真つきで紹介される。ヒッチコック・パターン一覧、ヒッチ・アラカルトとして「列車」「メガネ」等のアイテム、ヒッチコック劇場等も説明される。ヒッチコック評唱として海野弘、和田誠等、私のヒッチコックとして植草甚一、淀川長治、双葉十三郎、渡辺祥子、大林宣彦各氏がヒッチコックおよびその映画を語る。ヒッチコック関係文献、ヒッチは語る出典一覧、巻末のスタッフ別人名索引も充実している。とにかくほとんどの頁の余白がないほどに情報満載。パラパラ漫画風にサイコの有名なシャワー場面のシークエンスが283頁から373頁の各奇数頁(左側の頁)の左下スミに掲載されているのは、DVDでコマ送りできる今では無用かもしれないが、私が本書を初めて手に取った1980年には面白いと思ったものだ。映画の神様の1人ヒッチコック作品を鑑賞する楽しみを何倍にも増やしてくれること間違いなしのお薦めの本です。