タイトルに惑わされてはいけませんね。
バイオレンスは象徴としての言葉としての使われ方と思っていいかと。
主人公トムの陰惨らしい過去は、実際には、それほど、はっきり
とは最後まで明らかにはなりません。
彼の過去は、エド・ハリスと、ウイリアム・ハートという名優の、
出番はまったく少ないながら、
圧縮された、圧倒的な「悪」の存在感で、トムの過去がいかに
陰惨であったか、をなんとなく感じ取ることで、さらに悪い
想像をふくらませることになり、想像が想像を呼び、観客は
どんどん想像の深みにはまっていきます。
全体的に緊張感が満ち、しかし、暴力シーンは、最低限に抑えられ
、その演出の巧みさから、観客は、余計に、家族のかかえる
抑圧された、妻、息子。そしてトムの、ストレスと暴力の爆発、
セックスの暴発という、エネルギーの発散を、もろに感じ取る
ことになります。
ラストも秀逸で、観客は、台詞のないラストに、想像をふくらませ、
この映画を通して、登場人物に鬱積し、自分自身にも鬱積した
やるせない感情移入のエネルギーのはけ口を求め、なんとも
やりきれない幕の閉じ方に、悲しいというか、なさけないというか、
息苦しい感情の発生を自覚することになるでしょう。
近年、まれに観る、静かだけれども、
作品の雰囲気自体に、何か得たいのしれない、悪の
エネルギーが圧縮されて、練りに練った、秀作のひとつ
と言えると思います。