37 人中、35人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
観客を暗黒に巻き込んでいく、異色の傑作, 2006/9/21
レビュー対象商品: ヒストリー・オブ・バイオレンス [DVD] (DVD)
タイトルに惑わされてはいけませんね。
バイオレンスは象徴としての言葉としての使われ方と思っていいかと。
主人公トムの陰惨らしい過去は、実際には、それほど、はっきり
とは最後まで明らかにはなりません。
彼の過去は、エド・ハリスと、ウイリアム・ハートという名優の、
出番はまったく少ないながら、
圧縮された、圧倒的な「悪」の存在感で、トムの過去がいかに
陰惨であったか、をなんとなく感じ取ることで、さらに悪い
想像をふくらませることになり、想像が想像を呼び、観客は
どんどん想像の深みにはまっていきます。
全体的に緊張感が満ち、しかし、暴力シーンは、最低限に抑えられ
、その演出の巧みさから、観客は、余計に、家族のかかえる
抑圧された、妻、息子。そしてトムの、ストレスと暴力の爆発、
セックスの暴発という、エネルギーの発散を、もろに感じ取る
ことになります。
ラストも秀逸で、観客は、台詞のないラストに、想像をふくらませ、
この映画を通して、登場人物に鬱積し、自分自身にも鬱積した
やるせない感情移入のエネルギーのはけ口を求め、なんとも
やりきれない幕の閉じ方に、悲しいというか、なさけないというか、
息苦しい感情の発生を自覚することになるでしょう。
近年、まれに観る、静かだけれども、
作品の雰囲気自体に、何か得たいのしれない、悪の
エネルギーが圧縮されて、練りに練った、秀作のひとつ
と言えると思います。
16 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
正に「暴力の系譜」, 2006/9/10
レビュー対象商品: ヒストリー・オブ・バイオレンス [DVD] (DVD)
観賞後に考えさせられる映画です。
暴力によって守ったものを、暴力によって壊し、それでも守るために更に
暴力をふるう。
全く救いのない負のループにとらわれた主人公の悲しさがにじみ出てくる映画
です。
必要以上にグロテスクな暴力シーンもそれを意図しての事だと思います。
ラストで味わう、多くの絶望と少しの希望が印象深い映画でした。
8 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
3つの視点, 2006/12/29
レビュー対象商品: ヒストリー・オブ・バイオレンス [DVD] (DVD)
1.クローネンバーグによるバイオレンス・アクション
アクション・シークエンスは小気味よくまとめられています。但し血や脳漿の飛び散り方は凡百のスプラッターとは異なりクローネンバーグらしいこだわりが感じられます。また肉体の損傷の表現はクローネンバーグならではです。もちろんバイオレンスらしい痛みの表現もちゃんとあります。
2.俳優の演技合戦
ヴィゴ・モーテンセンの抑えた演技は賛否が別れるかもしれません。若き日のジャック・ニコルソンがやっていたら主人公の二面性をもっとはっきり表現していたでしょう。
エド・ハリスはいかにもマフィアの大物的演技で、教科書どおりといえるかもしれません。エド・ハリスを『ライト・スタッフ』で初めて見たときには、単なる実在の宇宙飛行士ジョン・グレンのそっくりさんだと思っていました。その後の活躍はご存知の通りです。
一番びっくりしたのは、やっぱりウイリアム・ハートですね。見た目もそうですが、こんな役、演技をやるようになったんですね。アカデミー賞を未だもらってないんでしたら、これであげてもいいと思います。もらってましたっけ?最初誰がやっているのかわからなかったのですが、未だに変わらない子供みたいにイノセントな瞳を見て思い出しました。
3.人間の本能、暴力と家族愛
これについては、微妙ですね。ラストでもハリウッド映画的なカタルシスはありませんし、押し付けがましい教訓みたいなものもありません。なにか硬いものをそのまま飲み込んでしまったような後味が残ります。クローネンバーグの映画っていつもそんな感じですね。無理にテーマを探すこともないかもしれません。