ヒストリエ6巻は、仕事や馬術の修練に勤しむエウメネスを中心にマケドニアという国の成り立ちを紹介する前半と、ミエザにてアレクサンドロス王子と学友達を紹介する後半からなる。
5巻のカルディア編クライマックスから一段落して、次の舞台と人物の紹介のためやや落ち着きを見せるストーリー。
だが史実ではアレクサンドロスの僚友であったヘファイスティオンの扱い一つで、死体の一つも出すこと無く岩明均らしいグロテスクな神話的妖しさをすでに醸し出している。
”鐙”の伏線回収や偏執的にアレクサンドロス母子に現れる蛇のイメージなど、小さなエピソードもページ数を割いて(時間をかけて)丁寧に描くゆえに、読者は続刊を待ち焦がれる苦しみも背負わねばならない。
個人的には実に味のある脇役としてディオドトス書記官が目についた。
だがしかし今回の見所は馬だ。
表紙でアレクサンドロスに付き従う僚馬ブーケファラスに始まり、あちこちの場面で躍動する馬の肉付きから毛並みの一本一本まで実に精緻に描きこまれ、馬の足運びも気持ちも手にとるようにわかる。
そうしてリアリズムを追求した先にある美が単行本のあちこちに散見される。
各エピソードでも馬が関連していることから、岩明御大は恐らくこの巻で馬を魅せようと描き方を研究したに違いない。
漫画でなければ味わえない視覚的な幸福を味わっていただきたい。