最高に楽しくてヒップなライブ盤。ずいぶん前から予約して買ったわりに、このCDの封を切るタイミングをはかっているうちに聴くのがすっかり遅くなってしまった。ネルソンとマルサリスが組んで、定めたテーマが「レイ・チャールズ」そして若いリスナー向きの売りが「世界的な歌姫ノラ・ジョーンズをフィーチャー!」ときた。カントリーにジャズ、そしてソウルの大御所が名前を連ね、そこに迎えられるのは若さに似合わぬソフトでメロウな声のR&Bシンガー。どの一人をとっても大好きだし、二人ずつの組みあわせでの過去のコラボはいずれも傑作だった。が、全員が結集するとなると、はたしてどんな化学反応が起こるのか。チャレンジ精神ばかりが前に出て、金持ちのクラブマニアが集う夜のライブならではの小難しくて薄っぺらな音楽になってしまっているのではないか。
余計な心配だった。これはもう、朝でも、昼でも、夜でも、いつ聴いても気持ちよくなる極上の音楽。まずはウィントンの伸縮自在にして完璧なコントロールのトランペットの「歌」に酔い、それに即興的にからんでいく渋いながらも洒脱であったかいウィリーのギターとボーカルの「話術」に魅せられる。老練でありながら生きのいい二人に比べると、ノラの声は伸びやかで心地はいいものの表情のひだは少なめで、まだまだ百戦錬磨とは言いがたいが、その若さを見まもる周囲の視線がたとえようもなく優しい。年輪を刻んだ人たちならではの慈しみを感じさせる。こんなふうに「人生の先達」から愛されている娘の息づかいが、次第に聴いているこちらにもどんどんと魅力を増していくように思えることこそ、音楽の奇跡なのかもしれない。みごと。個人的には今年のベスト盤となりそうな予感。