脱獄囚ブッチ・ヘインズ(ケビン・コスナー)と人質として誘拐した少年フィ
リップ(T・J・ローサー)の心の交流を、イーストウッドが、やさしく滋味たっ
ぷりに描いたロード・ムービー的ドラマの秀作。
ブッチが目指す「パーフェクト・ワールド」とアメリカがケネディに託した「新
しい世界」の実現を重ね合わせた重層的構成が巧い。ブッチの「パーフェ
クト・ワールド」もケネディの夢見た理想のアメリカも、ともに幻でしかなく、
儚く消え去っていく運命にあることを知っている観客は、そのせつなさに
胸を締め付けられる思いだ。イーストウッドの演出は、コスナー扮する主人
公をやさしく見つめ、慈しむように包み込んでいる。
コスナーが悪役を演じるということで、劇場公開時、話題になったが、他の作
品のように変な自意識がなく(イーストウッドの演出のおかげだろう)、忘れが
たい名演を披露している。やさしい心を持ちながら、劣悪な環境で少年期を
送ったことで、犯罪に走ってしまった男の粗暴さと哀感を表現していて素晴ら
しい。イーストウッドも脇にまわり(最初は監督のみの予定だったらしい)、心
情的にブッチに同情する保安官を静かに好演。ローラ・ダーンの心理分析官
も控えめながら、深い印象を残している。
他の多くのイーストウッド作品同様、本DVDにも特典映像は収録されず、予告
編のみ。本編の画質・音質ともに良好とはいえ、やはり寂しい。