約20万年前にアフリカに誕生したヒトは約7万年前に絶滅の危機を迎え一時、人口1万人(2000人とも)以下となった。その後、6万年前頃から移動が始まり4万5000年以内に南極を除く全大陸に渡り、数百万の狩猟採集民となって全世界に散らばっていった。そして約1万年前、ヒトは農耕(家畜を含む)を発明した。農耕は安定した食料を供給して人口を急増させ、文明を発展させる契機となった。
著者は農耕の開始時にパンドラの箱から種(作物のたね=「災い」のたね)が撒かれたと捉える。「災い」とは、感染症の蔓延、糖尿病などの慢性病(近年では肥満)のような「体の病」やストレスによる「心の病」である。現代的な「災い」として「地球温暖化」と「ミトス(=ミュトス)の喪失と原理主義」の問題が語られる。また、「災い」であるか否か判断が難しいが「遺伝子治療」についても語られる。
本書は、著者の意気込みは感じられるが、比較的少ない頁数の中に広範な内容、それも生物学的内容だけでなく、社会、経済、宗教、倫理などの分野まで収めようとするため記述が不十分なところがあるのが残念である。しかし、人間の未来を考える新しい文明論としてお薦めできる作品である。