「MAIDENこれ一枚」を選ぶとすれば、間違いなくこのアルバムを選ぶ。僕が彼等の作品中、最も好きな作品だ。
疾走するメタルサウンドと共に、僕らを一気に第二次大戦のヨーロッパ戦線の、その勇壮なドッグファイトの瞬間へと誘う「ACES HIGH」。直後に時代を駆け上がり、核兵器が対峙するこの現代、世界滅亡が一瞬にして創出されてしまう恐怖を、焦燥感横溢するギターリフで表現する「2MINUTES TO MIDNIGHT」。タイトルチューン「POWER SLAVE」を始め、エジプシャンムード満載のエキゾチックかつミステリアスな世界を展開する各曲群。そして、大作主義を指向するMAIDENの、その一大叙事詩的超傑作ナンバー「THE RIME OF ANCIENT MARINER」・・・
アルバムカバーのデザイン、そしてスリーヴの紙質(LPレコードの時は、全体的にエンボス加工されて、独特の光沢感があった)まで、その全てが大好きだった。そしてそれは、発表後26年が過ぎた今も変わらない。ひょっとすると、僕の人生そのものに影響を与えた作品のひとつ、と言えるかもしれない。本作は、僕にとって、そんなアルバムになっている。
このアルバムが発表された頃は、米国において空前のヘヴィーメタルブームが勃発する、まさにその直前であった。VAN HALEN「1984」、JUDAS PRIEST「DIFFENDERS OF THE FAITH」、SCORPIONS「LOVE AT THE FIRST STING」、MOTLEY CRUE「SHOUT AT THE DEVIL」、DEF LEOPARD「PYROMANIA」etcetc・・・。パッと思いつくだけでも、これだけの名作がこの同時期にリリースされている。
そうした中にあっても、最もメタルのコアな部分を保持しながら成功を手中にしていったIRON MAIDEN。そのピュアな魂、アティテュードが、後のフォロワー達(METALLICA、MEGADETH、PANTERA、果てはSLIPKNOTまで)に受け継がれていくことになるのだ。そして本作は、それを最も象徴的に示した作品になっていると、僕は信じている。