登録情報
|
なって、すばるを生み出したともいえる。その天文学者の一人成相恭二氏は本書を全面的
に新しい訳に作り変え、2002年に岩波文庫として蘇らせた。通常であれば歴史の中に
埋もれ、消えてなくなっていったであろう本が、21世紀の今日よみがえったのである。
当書はパロマー天文台がいかに構想され、天文学の巨人ヘールによって実現されたかをつ
づった本である。20世紀の学問、技術の進歩と同調するようにパロマーは作られていっ
たのだ。
その反射鏡は耐熱性のパイレックス・ガラスの発明無しにはあり得なかった。アルミニウ
ム蒸着法は、パロマーの鏡のために生み出さされた技術だったのだ。この技術の芽生えだ
けとっても本書は相当に面白い。あるいは鏡を磨いた人たちの物語は超絶的ですらある。
ところで20世紀の物理学の進歩について書かれた本は多い。アインシュタイン、ランダ
ウ、ハイゼンベルグ、ボーア、パウリらの著書がそれである。理論が先行する物理学を検
証する天文学という側面は今も続いている。本書は最新物理学を裏付ける20世紀の天文
学の最先端がパロマー等の巨人望遠鏡によって開拓されていったことを記すが、重力レン
ズや赤方偏倚など良く知られている事象が次々とパロマーによって見いだされていく様子
は読んでいてわくわくするのである。パロマーに象徴される天文観測の進展なくして、物
理学の進歩もまたなかったものと想像される。
天文好きにも、また物理学が好きな方にも、どちらも楽しめる好著である。
復刻の努力をされた、成相恭二氏に感謝したい。
望遠鏡建設のためには、立地条件の選定、反射鏡ガラスの製造、望遠鏡の支持装置の設計など様々な課題があり、この本ではそれぞれの課題の解決に至る苦闘が記されている。資金援助者とヘールの駆け引きのように愉快なエピソードもあるが、ガラス磨きの専門家達が精神に異常をきたす件には戦慄を覚えた。
これはアメリカにおける「プロジェクトX」である、と思ったら下巻で成相恭二氏が同じ事を言っていた。
|
|
|