パリは、かつては臭く不衛生な街であったという。
私の興味はそこから話題は広がり、フランス第二帝政下の「パリ都市改造」などを手始めに調べ始めた。そのおり、ある新聞書評欄から「パリ 地下都市の歴史を」知った。
何とパリの地下には、他の都市にはない石灰岩や石膏の採掘跡の空洞が広がっているという。
人はそれらを、「シロアリの巣」と呼ぶこともあれば、多数の穴(気孔)があるスイスチーズと表現することもある。パリという都市について、大改造後の道路や公園、さらには、発達した下水道や地下鉄路線については比較的知られているが、本書では更に地下深い「採石場」跡の話題を紹介してくれる。
筆者は幅広く、硬軟の話題を取り混ぜて、丁寧に、また素直に著述している。図版の多さも魅力であり、なかでも共著者による図版もうまく取り入れられている感じがする。
このような二人の著者の作品は、また訳者によってうまく表現されている。すなわち、翻訳本にありがちな日本語らしくない日本語、時にストレスさえ感じさせる部分が、この本には無い。おそらく、素直な記述と思われる原文に対して、翻訳者も日本語扱いが優れているためと思われる。
フランスの都、いや世界の都といわれるパリは、高層ビルからの景観が最高と言われるが、実は、パリは堆積層の上に乗っかった特別な構造の都市であることを伝えてくれる、貴重な本である。