フランスのお菓子の魅力にとりつかれてパリに数年暮らしたこともある人気菓子研究家ならではの現地エピソード、そしてパリのお菓子にまつわるとりどりの歴史的逸話とがほどよくあんばいされた、甘い甘い、でも使える情報たっぷりのお菓子ガイドだ。
高温焼きの後乾燥、という2度焼きの手法のため、シャンパンに浸したとき“ふくよか”と“しっかり”両方の食感が楽しめるという「ビスキュイ」。表面の厚さ2ミリぐらいをわざわざ焦がすのに、中はあくまでもキメの細かいスポンジという、冒頭の「トゥルトー・フロマージュ」…。最高のテクニックを思い思いのウィットの衣に包んで届けるパリの職人たちのおちゃめなウィンクが、ページをめくるたびにちかちか瞬く。フランス人が一等大切にするというお菓子の触感にも似た、クルスティヤン(カリカリした)で気の利いたエッセイと美しいグラビアを「ちょっと一服」の連れにすれば、甘党ならずとも万人の午後にうっとりと幸せな時が流れるはずだ。
巻末の地図と各店のグラビア解説のページに共通番号を振るなどして相互参照していれば、使い勝手はさらに上がったろうが、地図から詳細ページに戻るときに不便なのがちょっと残念。パリに旅立つ前にこのページのこの一品!と心に決めて、その菓子店を中心に午後の行動半径を決める。そんな予定調和的使い方もいいけれど、とりあえずはこの1冊を手に出発しよう。歩き疲れたとき、旅の相棒に当たりちらさず1人ふさがず、黙ってページをめくって138ページの地図を開こう。そして最寄りのスイーツの店にふらふらとたどりつけさえすれば、悦楽のひとときが待っている。幸せなエネルギー補給の力を借りてもう一区画足が伸ばせ、思いがけない出会いがあるかもしれない。(石井節子)
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「本当に美味しいパリのお菓子はどこに行けば食べられるのか?」この単純にして意外に難しい問題に真正面から取り組み、真摯に答えているのが本書です。サンジェルマン、サントノレ、マレ、パッシー...パリの町を丹念に歩き、一軒ずつの味を著者自ら確かめ、ホテル、レストラン、チェーンのパン屋、デパートの土産コーナーまでも訪れ、まとめ上げたのが本書です。何時の間にかパリの町にも詳しくなれます。
30軒の追体験を試みた私は、1軒だけ、「えA?これは違うのでは?」と思ったことがあります。高いレベルを維持するのは簡単なことではないようです。
なお、レシピや調理法を求める方には不向きかもしれません。
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