パリは歴史の重みに満ちながら、一方、日々変容をとげている街でもある。有名観光スポット以外の、何気ない路地の一郭に著名人所縁の場所を見出したり、都会化された中の自然を感じたりすることも旅の楽しみだ。そんな知られざるパリを徒歩、あるいは自転車、船も併用して訪ねようという試みは参考になる。
しかし、詳細に見ると問題が多い。個々の背景解説には、もっと的確な事実関係の推究が欲しい。具体的に何点か例示すれば、
○パスチーユ歌劇場は国鉄駅の跡地を再開発したものだが、その駅とそこから発する路線の経緯
○ギマールのメトロ駅舎に関する事実関係
○運河の、ヴィレット貯水場のサイズ
○競馬の、凱旋門賞の出走資格
などである。
また、地名の原スペルにも誤記が散見されるし、イラストマップは見難く、ミシュラン等の地図を、版権料を払ってでも転載した方が明快で、費用も大差ないだろう。
極め付けは、パリの南に隣接する自治体、わが国の基準に当て嵌めれば「市」に相当するマラコフが「県」と記されていることで、新しい県が出来たのか、と飛び上がるくらい驚いた。それでいて、ノミの市ではサント・アン「市」と正しく記している (語源と原スペルからすれば、むしろ中黒無しの方が好ましい)ことは、執筆者が異なるためだろうか?
海外旅行が普及する中で、安易な企画の本が氾濫することは残念なことである。