原著者はリストやショパンから直接ピアノレッスンを受けたことがある人で、かなりピアノが上手かったようです。ショパンとリスト以外にもカルクブレンナーやモシェレス、クラーマーといったピアニスト/作曲家に対してもいろいろ言及されています。また、モーツァルトが時代遅れと見なされていたことや、ベートーヴェンのソナタは1840年代までは初期の曲と月光・熱情くらいしか弾かれなかったことなど、当時の音楽事情が書かれている点がおもしろいです。
原著が独特の文体で書かれているようで、わかりにくい比喩やもったいぶった表現などが多く、日本語訳には相当な苦労があったと思います。別冊の注釈も大変な労作だと思います。価格の割りにページ数が少なくすぐ読み終わってしまうこと、注釈のために別冊が必要になるほど当時の芸術文化全般にわたる予備知識を要求されること、そして全体的に「ピアノ愛好家の回想集」の域を出ていないこと、など微妙な要素が多いので☆3つで。
ウェーバーのピアノソナタの解釈についてリストと突っ込んだ議論をした様子などが楽譜解説付きで載っていて、その部分だけ思い出モードを脱して真剣な演奏家になってしまっているのが微笑ましいです。