『ジャージの二人』のときは、じんわりくるおかしみより、妻に対する陰にこもった湿った感情が、いやに目について、どうもしっくりこなかったのですが、この『パラレル』は、とてもうまく、いろんな感情が消化されて描かれていると思いました。あるレベル以上の作品は、こちらが望まずともすうっと、作品の世界に引きこんでくれるような感じがします。
長嶋氏の持ち味である、ちょっととぼけたような雰囲気も、作品全体に行き渡っていて、決して明るい話ではないのに、深刻ぶらず、淡々と物事を受け止める主人公・七郎のようすが、丁寧に書き込まれています。友人の津田、元妻、キャバクラ嬢のサオリ、みんな、どこか醒めたような、それでいて人と繋がりたがっている感じ。サオリの孤独も、元妻の孤独も、七郎は感じているようですが、自分からは入り込んでいかないところなんか、七郎という人間をよく表していると思いました。
サオリの堕胎や、後の結婚。嫉妬に狂ったような赤い唇の女など、結構濃い描写もあるのですが、全体として、するするとした印象で、それなのに、人の様々な感情がこんなに伝わってくる作品は珍しいと感じました。