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パラドクシア・エピデミカ ― ルネサンスにおけるパラドックスの伝統
 
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パラドクシア・エピデミカ ― ルネサンスにおけるパラドックスの伝統 [単行本]

ロザリー L コリー , 高山 宏
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 7,980 通常配送無料 詳細
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商品の説明

内容紹介

ギリシア・ローマの雄弁術から中世の否定神学を経て、ルネサンスの科学・文芸・思想を席巻した「風土病」としてのパラドックス作品を百科事典的に通観した名著。待望の完訳!

内容(「BOOK」データベースより)

言語遊戯、逆さまの世界、静物画、真空の発見、否定神学、自殺礼讃。「知」をねじ戻す奇態な自己言及の営みが時代を席捲した。ルネサンス研究を現代へと啓く文化史の傑作。

登録情報

  • 単行本: 646ページ
  • 出版社: 白水社 (2011/6/18)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4560081476
  • ISBN-13: 978-4560081471
  • 発売日: 2011/6/18
  • 商品の寸法: 21.6 x 15.8 x 4.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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8 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 今年の翻訳書でベスト5に入る偉業である。訳者の労とともに、長年併走してきた編集者の努力も褒められるべきだろう。文芸批評の枠を大幅に越える(逸脱する)、真に開かれた精神をもつ学者の仕事であり、「否定道」の思想史とも「パラ修辞学」の文学史とも「異論理学」の精神史とも読める射程の大きさを具えている。文体の妙、それをよく写した訳者の名人芸、見事と言うしかない。
 解説・あとがきはいつもの高山節で多少既視感が募る、古典語の転記や索引の原綴表記にブレがある、「ハイヘンス」(正:ホイヘンス)など非英米人の表記にやや難がある……散見される不備やミスはこの際、訳業の大変さに免じて黙認しよう。われわれの世代がホッケに夢中になったように、今時の若者が一人でも多く「ローズ」に狂ってくれるよう祈るのみ。
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12 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
僕が本書をひもといてまもなく思い浮かんだのは、本書と比べてサイズ的にはとっても小さなライオネル・エイベル『メタ=シアター』のハムレット像。あれは「なぜボルシェビキがこの劇を愛でなかったか」という怖そうなお話から始まるんだけど、これを極言すれば《その劇がひとつの絶対的パラドクスであるから》。むむむ。

さて本書。訳者高山宏氏の仕事はすでに「高山文庫」とでもいうべき一大コレクションであり、近年のバーバラ・マライア・スタフォードの全訳(!)あたりからもはや「一人ボーリンゲン叢書」とでもいうべき前人未踏の領域にさしかかってきました。ほんとに冊数でいうと「あちらに見えますのが・・・」というぐらいの、それ自体ピクチャレスクな光景を構成してますからね。高山山脈、ほんとに高い山ばかりです。

そこにさらに付け加わったのが、この大冊。訳者にとっても悲願の一冊だったというロザリー・コーリーの名高いルネサンス研究です。僕もいちおう原書持ってます。うん「持って」ますよ(笑)

でもこの本、翻訳でいよいよじっくり読んでみると・・・僕にはそれほど衝撃はなかった。なんて、生意気ですごく怒られそうだけど、むしろ「あーやっぱりそうか・・・」と。今こうして通読してみると、むしろ文化史家としての高山宏が辿ってきた長い道のりを、煎じ詰め、結晶化させ、要約した本のようにも見えてくる。

むろん彼の仕事がここからきてるのだから当然かもしれないけれど、いま逆にこの翻訳書、というか「パラドクス」という本書の示したひとつのエピデミックな観念そのものが、読み進むにつれこれまでの高山宏氏の仕事をじわじわと満たして行くように見えたんですよね。

確かに氏の愛でるピクチャレスク芸術だって、「自然らしさ」をひたすら人工的に求めるという愉しき矛盾病に他なりませんからね。いやいや、むしろパラドクスを孕んでいないモダンな兆候を探すのが難しい。ただルネサンス期を扱った本書の場合、高山翻訳道の初期作品であるシューエル本なんかと違って、近代科学やモダニティーと「パラドクス」との絡みが、もっとわかりやすい形で見えてくる気がします。

たとえばジョン・ダンの矛盾含みの詩法なんて、簡単に言えば天動説から地動説へのパラダイム転換、認識の大革命と切り離せない。アレゴリーや文学的トポス(定型)の固定的枠組みから、自己言及的メタ=フィギュールへと至る《詩法》の変化は、要するに世界観そのものの変化。ペトラルカとダンの違いは「足下が動いているかいないか」ということなんですよ。

そこで、存在と生成、超越知、自己言及──このあたりの章タイトル、兼キーワードから僕なりに最後にぽわぽわーんと頭に浮かんできたのは、この「パラドクシア・エピデミカ」の最後に行き着いた先が、ひょっとすると18世紀の総決算とでもいうべき、カント哲学だったんじゃないかってこと。だってtranscendental argumentなんて、まさしくパラドクス以外のなんであろう? それは認識という自分の「足下が動いている」のを認識しながら、その認識を認識が認識しちゃうという、果てしない精神の運動であるわけです。

それがなぜルネサンス的意匠とつながっているのか? 不思議! でも本当! 自己とは、関係が関係それ自体に関係するよう関係のことである──などいいつつキルケゴール先生も墓場から出てこようというものですが・・・まあさすがにここまで言ったら、やりすぎかw

でもちょっと大げさな言い方をしておきたいのは、この本の副題だけ見て、パラドクス・エピデミカを、ルネサンス期の「文学的意匠」だなんて小さく捉える人がいたら困るから。本書は、確かに非常に専門的に書かれたプロフェッショナルの仕事なんですが、コーリー女史が氷山の水面下の広がりのように隠し持っているのは、パラドクスが《モダンな知が認識した世界像そのものである》という真意です。

まあそのあたりは、高山宏氏があとがきが存分に語ってくれてます。久々に、あー僕ももっと本を読まなきゃという気にさせられました。すばらしい訳書に感謝を!
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