今年の翻訳書でベスト5に入る偉業である。訳者の労とともに、長年併走してきた編集者の努力も褒められるべきだろう。文芸批評の枠を大幅に越える(逸脱する)、真に開かれた精神をもつ学者の仕事であり、「否定道」の思想史とも「パラ修辞学」の文学史とも「異論理学」の精神史とも読める射程の大きさを具えている。文体の妙、それをよく写した訳者の名人芸、見事と言うしかない。
解説・あとがきはいつもの高山節で多少既視感が募る、古典語の転記や索引の原綴表記にブレがある、「ハイヘンス」(正:ホイヘンス)など非英米人の表記にやや難がある……散見される不備やミスはこの際、訳業の大変さに免じて黙認しよう。われわれの世代がホッケに夢中になったように、今時の若者が一人でも多く「ローズ」に狂ってくれるよう祈るのみ。