話は過去に遡って、クリスティーナと遼太郎の祖母・多華の出会いの物語。それに宿敵の黄夫人の事件が絡んでくるわけですが……
今回は多華が主人公かと思ったら、別に櫻井忍という新キャラを出してきて前作までの遼太郎と同じ巻き込まれ型の主人公を用意してるわけですが、わざわざ過去の因縁話と断ってる作品にこういうキャラクターが必要なのかどうかは疑問です。ただ、本作品を単独で手に取った読者にはこの方が入って行きやすいでしょうけど。
エピソードそのものは完結してるからこれだけ読んでも、あるいはこれだけ読まなくてもシリーズの進行上はあまり支障は無いでしょう。跡部の家系についての説明もあるから抑えておいても損は無いですが、肝心のクリスティーナと多華の絆も思ったほど何重にも固く結ばれてるものでもないみたいだし、黄夫人に至ってはこれ以前からクリスティーナと戦ってるとあっては前巻の謎解きにもなりません。
相変わらずクリスティーナが超然とし過ぎてるのが興醒めの一因であることは否めません。この作品、『パラケルススの娘』と題していながらその「パラケルススの娘」についてはほとんど描かれていないんですね。物語の一環として通り一遍の危機は迎えてるんだけど、作品としての中身が伴ってないというか……。過去の話ぐらい、もうちょっと内面を見せる部分があっても良さそうなのに。
次巻から『跡部遼太郎の受難』とでもタイトルを変えたらどうでしょうか?