古代における本の価格や流通の問題など興味深い話題や情報が多いのだが、典拠が疑わしい記述が散見し、門外漢が安心して読むことができない。雑誌の連載もののような軽い読み物としてならともかく、この種のテーマの日本語の本自体が少ないのだから、もっと厳密に校正してほしいものだ。軽く読み飛ばしたりするならともかく、学術書・典拠としては使えない本である。
例えば、アレクサンドリア図書館はカエサルによって焼かれたわけではないかもしれないのに断定しているし、同図書館の「未整理本9万巻」というのおかしい。また、パピルス=巻物、羊皮紙=冊子本、とおもいこんでいるのもおかしい。
ヘラクラネウム出土の炭化パピルスのCTスキャンによる読み取りの話題ぐらいあってもいいだろう。
また、「出版」という用語をやたらに使っているのは、この写本時代には不適当であろう。「版」自体がないのだから。「公刊」「刊行」というのが、よりよいと思う。
総じて前世紀(20世紀)の出版人らしい思いこみが強い本である。
もっと、高価な本であるが、ホルスト・ブランク著「ギリシャ・ローマ時代の書物」を丁寧に読むほうが有益だと感じた。