ベトナム戦争の最中に、もともとはジョン・ウエイン主演の予定が(おそらく彼が主演では正義の戦争肯定が強くなるから)ジョージ・C・スコット主演に変更になり映画の趣向は戦争や戦時の英雄のむなしさをも訴える内容になっています。
スペイン軍の協力により、本物の戦車、火砲や大勢のエキストラ(スペイン兵)を使ったロケは迫力です。さすがに大部分の兵器は第二次大戦時のものではありませんが、He111爆撃機や20ミリ対空機関砲、88ミリ高射砲などドイツ軍の兵器で少しだけ映るものは、スペインが第二次大戦中にドイツから輸入したりライセンス生産し、1970年当時にスペイン軍がまだ保有していた装備の実物です。(He111は映画「空軍大戦略」(バトルオブブリテン)にも使われています。)
実際のパットン将軍は、実は繊細で補給や部下の損失を減らすことに心を砕いていたと言われます。また、彼の部下から、ブラッドレイ元帥の他、後の第8軍司令官ウォーカー中将(朝鮮戦争で事故死)、ベトナム派遣軍総司令官の後に陸軍参謀総長になり、M1戦車の名称になったエイブラムス大将などを輩出するなど、部下の才能開花の才もありました。
(余談ですが、パットン、ウォーカー、エイブラムス、パットンが若い士官の頃の上官であるパーシング将軍、いずれも戦後の米軍の戦車のニックネームになっています。ブラッドレイも装甲戦闘兵車のニックネームになっています。)
また、アイゼンハワーに大統領になる野心があるのを戦争中にいち早く見抜いたのもパットンです。
映画ではこれらの点には触れられず、戦場での熱血ぶりや粗野な言動に焦点が当たっていますが、実際の将軍のそういう面は多分に部下を鼓舞する将軍の演技であったと思われます。野戦病院でのビンタ事件も(映画では一人だが実際には二人)無断で戦場離脱した者と戦場離脱の常習者という軍法会議にかかり銃殺になっても不思議でない者を手袋でヘルメットの上からはたいたというもので彼がマスコミや政治家受けが良ければ問題になるような内容ではないものでした。
また、当時の米軍において、機甲戦やその戦術面では随一の将軍と米軍は勿論独軍にも目されていた存在であることや、第一次大戦で戦車大隊長として実戦に参加し負傷したこと(映画の中でブラッドレイに語る、唯一怖いと思ったときの話はこのときのは話が基と思われます)。近代6種のオリンピック選手でもありました。
映画の中で、英軍のアレクサンダー大将と親しげに話すシーンがありますが、実際にアレクサンダー大将は部下のモントゴメリーとの仲はあまり良くなく、不思議とパットンとはウマがあったようであることなどを予備知識として知っていると、より面白く映画を観ることができるでしょう。(モントゴメリーは自己顕示欲の強い性格から英軍の将軍達から嫌われていたようです(チャーチルには気に入られていたようです)。ロンメルが上官のケッセルリンク元帥やルントシュテット元帥とあわなかったのに似ています。)、
なお、字幕の明らかな誤訳は、カセリーヌ峠の戦闘をブラッドレイがパットンに説明する中で「ドイツ軍の戦車はディーゼルで・・・」とあるのは、実際には独軍のタイガー戦車のことで「ドイツ軍の戦車はティーゲル(タイガー(虎)のドイツ語風発音)で」とブラッドレイが言っています(第二次大戦中のドイツ製の戦車のエンジンはすべてガソリンエンジンでした)。