◆「ロス・マクドナルドは黄色い部屋の夢を見るか?」
リュウ・アーチャー対
フィリップ・K・ディックという構図
のもとに書かれた、ロス・マクドナルドのパロディ。
生臭く凄惨な事件の後にかまされる《最後の一撃》は、
脱力必至なシロモノで、まじめな読者なら怒るかもw
まあ、この結末も、私立探偵リュウ・アーチャーが〈複雑に入り組んだ人間関係
と、陰惨な家庭の悲劇にまつわる面倒な事件〉に巻き込まれながらも、一貫して
傍観者の立場を崩さず、まさに「視線」そのものといえる存在であるゆえです。
◆「カット・アウト」
前衛画家が、妻の死に際して、遺体に絵を描いた理由とは?
90年代初頭の新本格批判に対する作者なりの返答、ともいえる作品。
昔から、本格ミステリは「人間が描けていない」というテンプレート化された物言いに
さらされがちです。本作では、抽象絵画に対する警鐘として〈自然や人間に発する豊饒
なイメージを切り捨て、平板な画面とそれを見つめる視線の強度のみを追求し、不毛な
超越感覚と自己充足に埋没〉といった批評を挙げ、新本格批判と重ね合わせています。
その上で、敢えて人間を描かないことで、描ける
ものもあることを作者は高らかに宣言するのです。
◆「重ねて二つ」◆「懐中電灯」◆「黒のマリア」◆「トランスミッション」◆「シャドウ・プレイ」