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5つ星のうち 5.0
ロジックとパトスの相剋,
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レビュー対象商品: パズラー 謎と論理のエンタテインメント (集英社文庫) (文庫)
◆「蓮華の花」サラリーマン生活を経て、やっと作家になれた日能は、交通事故で死んだ と思っていた同級生の女性が生きていたことを知る。自分の記憶の齟齬に 違和感を覚えながら、彼は帰郷するのだが……。 誤った記憶が生じた要因を探っていくうちに自己存在 の根幹を揺さぶる真相を突きつけられてしまう主人公。 ミステリの趣向としては《操り》ですが、日能にアンフェアな手段で二者択一 を迫っていたことになる“操り手”の真意が何だったかは永遠に藪の中です。 何にせよ、愛情と束縛は表裏一体なものですね。 ◆「卵が割れた後で」 フロリダにある田舎町で、日本人留学生が死体となって発見された。 被害者はスーパーで食料品を買った帰りに襲われたと見られるが、 なぜかシャツの左肘の部分に、割られた卵が付着しており……。 事件についての議論が深まるにつれ、容疑者が 目まぐるしく変わっていくお約束な展開が秀逸。 ◆「時計じかけの小鳥」 数年ぶりに立ち寄った本屋で文庫本を購入した高校生の奈々。 その本はなぜか古本で、中には奇妙なメモが挟まれていた。 しかも奥付には、奈々の母親の筆跡で彼女のイニシャルが記されており……。 変則的な誘拐もの。 発想の飛躍を重ねることで導かれる意外な真相、作者が一貫して追究している 「愛情と束縛」といったテーマなど、作者の持ち味が遺憾なく発揮された西澤流 《日常の謎》です。 ◆「贋作『退職刑事』」 殺人の真相そのものよりも、それを受けて事件の関係者 が示す、ドライで計算高い思惑と行動が読みどころです。 ◆「チープ・トリック」 富豪の放蕩息子・スパイクが、有名歌手の“模倣演奏”を得意とする 歌姫・ナタリーを廃教会に連れ込み、レイプしようとするも、首を切断 され、殺されてしまう。 現場は密室状況にあり、彼ら以外にはスパイクの 取り巻きが二人いたが、誰にも犯行は不可能だった……。 リアリティに乏しい物理トリックがメインとなりますが、むしろ、そのトリックを 生み出した犯人の心理的背景や、序盤に仕掛けられていた叙述トリックが 読みどころと言えましょう。 ◆「アリバイ・ジ・アンビバレンス」 憶頼陽一は、同学年の刀根館淳子が同期生を殺したことを知る。 しかし、犯行時刻と目される時間帯に、刀根館が 全く別の場所に居たのを、憶頼は目撃していた。 刀根館は、なぜアリバイを主張しないのか? 「アリバイがあるはずの人間がなぜ殺人の罪を認めたのか?」という 不可解な謎に対する答えの背景には、根深い絶望と怒りがあります。 「犯人」の策略により、「被害者」は二律背反に陥らされてしまいますが、 結局どちらを選んでも身の破滅は確定しているという酷薄さが素敵です。
3 人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
バラエティ豊か,
By 九月 - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: パズラー 謎と論理のエンタテインメント (集英社文庫) (文庫)
6つの傾向の違う短編が収められています。著者お得意の、論理で事件を解決するパズル的なものが多く 結末についても、それが正しかったという物証などはないまま 終わる、というパターンが多し。 それゆえ、最後のしめの一言で、作品の後味が大きくかわります。 アメリカの街で日本人留学生が殺され、刑事たちが解決する 「卵が割れた後で」は、その最後のひとことゆえに、救いのある印象。 作品全体の雰囲気も好きで、いちばんお気に入りでした。 対して「時計じかけの小鳥」は、書店で買った本に謎のメモがはさまれていたことから 推理が繰り広げられる日常の謎モノですが、 前半のあたたかい世界が一転、寒々しくおわっているので、がっかりです。 物証がないので、こういう終わり方だと 確かめてからにしてほしい、と思います。 他に、「贋作『退職刑事』」とお話も収録されています。 都筑道夫先生の作品のトリビュートです。
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