「ざらざら」の姉妹編。雑誌連載の22編が収録されている。一話は3枚程度。基本的に一話完結だが、「修三ちゃんの黒豆」「道明寺二つ」は、おかま改めゲイの修三ちゃんと杏子の、「ざらざら」から続くシリーズになっている。それと、小人の山口さんを挟んで3話がスピンオフしながらつながっている。
読後振り返って気付くのは、不思議話が意外と少ないことだ。第一話の「海石(いくり)」が不思議話の代表なのだが、これを冒頭にガーンとかまされることで、この極小短編集全体を、不思議話のように錯覚してしまうのだ。
だが、「海石」(よくこんな不思議な言葉を拾ってきましたね)、恋人のおばあさんの幽霊、小人の山口さん、ドッペルゲンガーくらいしか超常的存在は登場しないのだ。落ち着いて読むと、ほとんどがごく普通のことなのだ。陶芸家にしろ無宿人にしろ、日常の周辺に平凡に存在する。これらを不思議話に読ませてしまうのが、作者の仕掛けなのだ。
それと、川上さん、なんか人生突き抜けましたね。セックスも結婚しない女もあっさりニュートラルに描いちゃうし、タイトルの一つに「きんたま」って…。ちょっと弘美さーん。