馬具製造業から喫煙具製造販売業を経て英国を代表するファッションブランド業へと進展したダンヒルの二代目当主、アルフレッド・ダンヒル(1872-1959)が著した喫煙具についての研究書である。およそ16世紀から本書が刊行された1920年代までの喫煙および喫煙方法、なかんずく喫煙パイプについての考察が著者独自の歴史観によって書かれている。1924年の出版後およそ半世紀にわたって、喫煙家および好事家たちの興味を惹いた書物であり、1969年にはダンヒルの子息が時代に合わせた加筆修正および資料図版を加えた改訂版が出版されている。日本語版は1971年、劇作家の梅田晴夫が翻訳出版し、1976年には装幀が一新され再版されたが、現在は原書を含めて絶版中である。人種差別が公然とまかり通っていた時代を象徴する如く、原書に多くの差別的な表現が散見されるのが絶版の大きな理由であろうが、それ以上に、全世界的に公共施設の禁煙化が推進されている現在、そして恐らくは今後も本書が復刊される可能性は薄いと言わざるを得まい。しかし、喫煙の歴史についての研究に先鞭を付けた点は評価されるべきであろう。