バロック音楽に興味があって(とくにヴィヴァルディ)、
この時代の背景などと音楽の発達や変化を絡めた著作を探していたが
今まで手に取った本はそうした興味関心を満たしてくれなかった。
だがこの本は違う。
さすがに冒頭は、フェリックス・アーヨとイ・ムジチネタから始まっていくが
筆はすぐに17世紀初頭のイタリアのマントヴァに飛ぶ。
ひとりの音楽家が教皇パウロ'U世に自作の曲を献呈するためローマに向かっている。
手に携えているのは通常通りの形式を守った合唱曲と、
管弦楽を輝かしさを存分にふりまきながら進む「聖母マリアの夕べの祈り」。
これが初期バロック最大の音楽家といわれるモンテベルディが本書に登場する場面。
「モンテヴェルディが作曲したふたつの作品は、
同じ人の手によるとは思えぬほど、スタイルが異なっている。
六声のミサ曲が合唱を主体として渋く、厳粛に綴られているのに対し、
聖母マリアの祝日のための音楽は、独唱、合唱そして管弦楽を対比も豊かに用いて、
まばゆいばかりの華麗さを発散している。
異なった書き方の音楽がこのように並び立つということは、
それまでの音楽史においてはとうてい考えられなかった」
的確な歴史把握と描写を交えながら、バロック音楽の歩みが綴られる。
無味乾燥な教科書風の退屈はどこにもない。
周辺の他ジャンル文化、政治状況、楽器の発達なども書き記され
それらがバロック音楽という一枚のタブローに納まっていく。