今から30年も前のこと、昼にFMで「朝のバロック」の再放送があって、塾の冬期講習から帰って耳にしたときが懐かしい。皆川達夫と服部幸三が、ナビゲーターだった。だが、書籍となると服部幸三のものはなく、皆川達夫の講談社新書で出ていた本書や、音楽之友社の「バロック音楽名曲名盤100選」なんかを、買って、珍しいレコードを参考に、西洋史の真髄に迫れていけるかのような、スリリングな錯覚を楽しんだ。本書を読んだとき、皆川達夫の文章は易しくて、ふうあいがあって、自然に物知りになっていけるような気がした。ご本人は専門はバロックではなく、むしろ中世・ルネサンスとのことも、素人ながらそうかもしれないと感じつつも、却って、古い方からの光で照らし出されるバロック音楽は魅力的だった。それとこの人が推奨する演奏のレコードには、まずはずれが無く、個人的には感性が合うのだなあ、という安心感があった。西洋史のご専門で、美学や音楽学ではない、というのも、歴史好きの人には相性が合うと思う。中世・ルネサンスの著作もぜひ読んで欲しい。しかし、楽理のほうからの歴史(理論史)を突っ込みたい人には、柴田南雄の「西洋音楽史」の中世とバロックの巻がお勧めだと思う。