バレンボイムがイギリス室内管弦楽団と録音した弾き振りのモーツァルト・ピアノコンチェルト全集が
素晴らしかったので、彼が書いた本に興味を持った。
この本の中に「モーツァルト」という章があることを知ったのも購入動機のひとつ。
読んでみると、かなり思っていたのとは違った内容だった。
彼の音楽論が展開される前半は、よくいえば論理的なのだが、かなり理屈っぽい。
「モーツァルト」の章はページ数的にわずかで、一問一答形式で、こちらも拍子抜け。
彼がイギリス室内管弦楽団と演奏した時は、こんなに理屈っぽくなく、大家然としていない
若々しく柔軟な頃だったのだろう。
この本の彼の印象は、ベルリンフィルを振る世界的に著名な指揮者としての
現在のポジションの上にあるようだ。
とはいえ、スピノザに心酔し、つねに主著『エチカ』を持ち歩き、ぼろぼろになるまで読んでいるとか、
沈黙や静寂に関する考察など、示唆に富んだ記述も少なくない。
巻末の彼の年譜は詳細で、興味深い。