1920年代まで続いたディアギレフについては、多くの本が書かれ、良く知られている。彼の死とともに、著名な彼のバレエ団は解散し、遺産は世界中のバレエ団に引き継がれた、と理解していたが、実は彼の死後も、団員たちは、同じバレエ・リュスの名前で、第二次大戦後まで活動していたのだ。この映画は、団員へのインタビューと古い録画を元に、1930年代から50年代までのバレエ・リュスの活動を記録したドキュメンタリー。
バランシンが一時バレエ・リュスの芸術監督となり、その後ニューヨーク・シティ・バレエを設立したことからも分かるように、ディアギレフとバランシンを繋ぐ、失われた環がバレエ・リュスだったという。バレエ・リュスは二つの団体に分裂し、大戦間の欧州で活動していたが、第二次大戦の勃発とともに、二つの団体は偶然にも同じ船でアメリカに逃れ、結果的に団員は皆生き残った(もし欧州に残っていたら、ロシアからの亡命者ばかりの団員は殆ど生き延びられなかったのではないか)。50年代までに(余りに金がかかるため)両団体とも活動を停止するが、団員は世界各地に散り、各地のバレエ団にバレエ・リュスの伝統を伝えている。ロシアのバレエの伝統が、アメリカに伝わった過程は、原子物理学や心理学、経済学などと同じで、学問の中核をなす人達が、亡命者としてそっくりアメリカに移住し、不毛だった場所に新しい木を植え、現在の繁栄の基盤を作ったのと同じであることに驚かされる。
登場するのは老人ばかりだが、誰も皆、美しく年を取っていて、素晴らしい。