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バルト海のほとりにて―武官の妻の大東亜戦争 (朝日文庫)
  

バルト海のほとりにて―武官の妻の大東亜戦争 (朝日文庫) [文庫]

小野寺 百合子
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

陸軍武官としてまずラトビヤへ、後に第二次大戦下のスウェーデンに赴任した小野寺信は、戦争終結への悲願を胸に真剣な情報活動を展開した。夫とともにバルト海のほとりに七年、日本に残した子供たちを気づかいながらも暗号電報作業を担った著者が、和平工作や欧州引き揚げの真相を語る。

内容(「MARC」データベースより)

なぜ的確な情報は中央から無視されたのか。第二次世界大戦下のスウェーデンで展開された陸軍武官の情報活動とその妻の奮闘の記録。夫の精魂こめて尽くした仕事から情報の活用とは何か、公共に生きるとは何かを著者が伝える。 --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。

登録情報

  • 文庫: 267ページ
  • 出版社: 朝日新聞 (1992/08)
  • ISBN-10: 4022607238
  • ISBN-13: 978-4022607232
  • 発売日: 1992/08
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 587,866位 (本のベストセラーを見る)
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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 正義の味方 トップ500レビュアー
形式:単行本
世界中が非常にきな臭くなってきた1935年(昭和10)から1938年(昭和13)までの駐ラトビア公使館付武官(1937年から兼エストニア、リトアニア)、1940年(昭和15)から終戦までの駐スウェーデン公使館付武官の小野寺信少将、その伴侶である小野寺百合子夫人の見た戦時中の在外公館、情報収集、社交界、生活を綴った物語である。時代は中国戦線が拡大の一途、芳沢謙吉大使の仏印交渉、野村吉三郎大使の日米交渉、しかし日本軍の作戦は止まらない。読みどころとしては、当時の外交官の社交生活、ドイツ・イタリアの枢軸国とソ連やイギリス、その他隣国の間の情報合戦、小野寺武官の情報発信に対し陸軍中央のベルリン情報一辺倒の姿、これらが克明に記されている。バルト3国やスウェーデンに駐在した大戦中の記録は希少価値で興味深い。まずは外交官の社交界だが、ディナー、ランチ、ティー等の公式パーティから婦人の家庭ティーパーティまで、それは大変である。情報収集源の確保と付合いは駐在武官の力量であり、また非常に危険な世界だった。武官夫妻の重要な任務は暗号書の保管管理と暗号電報送受信だ。独ソの戦況報告やドイツの出方について送信しても参謀本部は信じない。彼らが信ずるのはベルリンの大島浩大使だけで、それは誤報・判断ミスが多く、中央はそれで戦況を判断していた。よって当時の欧州にいた日本人でドイツの敗色濃厚を知らないのは、ベルリンの日本大使館と武官室だけと陰口が叩かれたものだ。本書を読んで感心はしたが、一方で戦時中に中立国スウェーデンに駐在、牛豚肉は配給でも物資や魚は豊富で、コックも女中もいてお客接待が多く・・との記述に戦地や国内の同胞と比べ違和感も覚えた。また最終章の「人の絆」での一戸家・小野寺家の華麗なる一族の詳しい紹介と閨閥に、思わず「頭が高い」と言われたようで平伏してしまった。
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
結論から言いますと、第二次大戦史に関心がある方には必読の一次史料として強く推薦します。

この本は、最初は「私家版」として少部数だけ自費で印刷され、その後に「これは出版するべきだ」と言う人があり、共同通信社への伝手があって同社からハードカバーとして出版されました。その後、朝日新聞社から文庫版で出て久しく絶版になっていたのを、再び共同通信社から「朝日文庫版を元にした改訂版」としてハードカバーで復刊された、変った経緯を持つ本です。

昭和10年代のほとんどを、少佐から少将の駐在武官・武官補佐官として欧州で勤務した小野寺信 陸軍少将 (陸士31期、陸大40期) の妻である小野寺百合子女史の回想録ですが、戦史に相当詳しい人でも知らない事実が多く書かれています。

* 小国に派遣される駐在武官は夫人と共に赴任するが、補佐官(日本の将校)のようなスタッフはいないので、夫人が最高機密を共有するスタッフとなる。駐在武官夫人の最重要な任務は「受信した暗号電報の解読、送信する暗号電報の作成、暗号書と乱数表の管理」であった。駐在武官夫人は、軍人でも外交官でもないのに、日本の国家機密に日常的に接していた。

* 本書には書かれていませんが、小野寺少将は、昭和10年代の陸軍で冷遇されていた「皇道派」の一員とみなされていたようです。東條英機に代表される主流波 (統制派) が参謀本部・陸軍省などの陸軍中枢の要職を独占する一方で、皇道派の将校は最前線の部隊勤務や、駐在武官のような「ドサ廻り」を余儀なくされていました。小野寺少将は、参謀本部勤務時代に、「蒋介石の国民政府との和平実現による支那事変解決」に向けて精力的に動き、後一歩で成功する所まで行ったが、寸前で汪兆銘の南京政府擁立 (蒋介石政権を無視する) となり、小野寺少将の努力は無に帰しました。ただし、国民政府要人と信頼関係を築いていた小野寺少将に対しては、重慶にいる蒋介石から、仲介者を通して、小野寺少将に労をねぎらう「蒋介石の自筆の文字が刻まれた金無垢のカフスボタン」が贈られたそうです。

* 蒋介石との和平工作で示された小野寺少将の「人間関係構築力」は、欧州で遺憾なく発揮されました。そもそも、情報活動というのは、相手と深い信頼関係を築き、この人になら情報を渡しても自分に危害が及ばない、と思わせなければ成功しません。小野寺少将はスウェーデン駐在武官として、独自の情報ルートで得た情報を東京に送り続けましたが、その精度は極めて高かったようです。小野寺少将は、1941年の時点で、独ソ戦でドイツが負けるであろうことを中央に多数の電報を送って警告し続けましたが、結果としては無視されました。

* 日本陸軍が情報については世界の最先端を行っていたことは、例えば 日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか (講談社選書メチエ)
「日本陸軍で大将や中将に上った将校の多くは、情報畑の勤務を経験していた」
「東京裁判でA級戦犯として処刑された板垣征四郎大将、松井岩根大将は『情報将校』と言える経歴である」
「日本の外務省、日本海軍の暗号は大戦中期以降は英米にガンガン解読されていたが、日本陸軍の暗号は解読されていなかった。重要情報を、使い捨ての乱数表 (無限乱数) で強化していたからである。無限乱数は、ソ連軍も使っており、これを解読できた国はない」
「日本陸軍は、アメリカの重要暗号を解読していた恐らく世界唯一の国である」
などと書かれております。

* 本書でも、小野寺百合子夫人の回想で
「重要情報は、特別暗号 (黒い布で隠された、使い捨ての乱数を使う) で暗号化し、東京に打電していた」
「アメリカの機械暗号の元になる機械を入手し、また、世界有数の暗号先進国であったフィンランドから連合国の暗号についての情報を入手し、ドイツ駐在の日本陸軍の暗号専門家 (数学者) がそれらを分析して、アメリカの暗号の解読に成功していた」
「そのため、小野寺少将は戦後に米軍から『アメリカの暗号を盗んだ男』と呼ばれた」
など、日本陸軍の情報力が世界水準を抜いていたこと (なのに、せっかくの情報が活かされず、ドイツの勝利を信じて対英米戦争を始めてしまったこと) が記されています。

* 小野寺夫妻は、大東亜戦争の期間はスウェーデンで駐在武官として過しましたが、スウェーデン軍高官、スウェーデン王室と深い信頼関係を築きました。そのため、日本の敗戦後もスウェーデン国内では日本外交官・軍人らは極めて寛大な扱いを受け、ドイツの敗戦寸前にスウェーデンに逃亡 (不法入国) した日本軍人も保護されました。戦後に陸軍少将の地位を失い、一介の市民に戻ってから、日本の独立後に、仲間と共に日本とスウェーデンの貿易会社を設立してスウェーデンを訪れた小野寺元少将は、旧知のスウェーデン軍将官を訪問した時に「以前と同じ、将官としての礼」で迎えられました。小野寺少将の人徳の高さを伺わせます。なお、小野寺少将らが設立した貿易会社のビジネスは順調に成長し、戦後の小野寺家の家計は恵まれていたそうです。
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13 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 西岡昌紀 VINE™ メンバー
形式:単行本
本書は、ムーミントロールの訳者として知られる北欧文学者であり、同時に、第二次世界大戦前から大戦中、ヨーロッパで日本の情報活動に従事した陸軍武官の妻でもあった小野寺百合子氏の貴重極まり無い回想録である。この本は、先ず、戦前のバルト三国に外交官の妻として住んだ著者の目から見た当時の独立したバルト三国の文化や社会、そして人々の心を回想した、恐らく唯一の日本語の本である。そこに書かれたバルト三国の人々の悲惨な運命--ソ連に併合され、多くの罪の無い人々が、生命を奪われた--には、胸を痛めずには居られない。又、現地で、ポーランド人などを使って、日本が情報活動を行なって居たと言ふ事実に関する著者の記述は、現代史の一次史料としても、かけがえの無い物である。特に、当時の日本とドイツが、同盟関係を結びながらも、お互いを完全には信用し合って居なかった事が、本書で語られて居る事は、特筆に価する。こうした証言と回想を満載した本書は、20世紀の歴史の証言として、外国語に訳されるべき貴重な一書である。(西岡昌紀・内科医/第二次世界大戦が、ヨーロッパで終結して60年目の日(=ヨーロッパの東半分がソ連の支配に陥って60年目の日)に)
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