バルトークのヴァイオリン協奏曲第2番は、単に、バルトークの最高傑作の一つであるのみならず、20世紀の音楽的遺産と呼ぶべき作品である。
この貴重な録音は、アメリカのユダヤ系ヴァイオリニスト、ユーディー・メニューインが、ドイツの大指揮者フルトヴェングラーと、この協奏曲を演奏した演奏の記録である。この演奏が、この曲の最高の演奏の一つである事は、誰の耳にも明らかであろう。−−メニューインが奏でる第一楽章のカデンツァは、第二楽章の子守唄の様な物悲しい旋律は、何と素晴らしい事か。そして、フルトヴェングラーの、夜の海を思はせる第一楽章の指揮は、第三楽章のフィナーレの熱情は、何と素晴らしい事か。−−私は、高校生の頃に、この録音をLPで聴いて以来、何度この録音を聴いたか分からない。
メニューインは、フルトヴェングラーが、「ナチに協力した」と言ふ「理由」で、特にアメリカのユダヤ系音楽家から憎悪を集めて居た第二次大戦直後、自らフルトヴェングラーとの協演を進み出て、この演奏を行なった。ユダヤ人でありながら、戦後間も無く、アメリカのユダヤ人社会からの非難も省みず、フルトヴェングラーとの協演をかって出たメニューインの人間的な大きさを感じずには居られない。そのメニューインの自由な精神とフルトヴェングラーの孤高の精神が、バルトークのこの偉大な作品において共鳴し合った、歴史的名盤である。
(西岡昌紀・内科医/ヨーロッパの大戦終結から61年目の5月に)