「二人」というのは、アシュケナージとチョンである。
アシュケナージのピアノはいつになく苦しい。ラローチャがラフマニノフPf協No.3を弾いている(Decca/London)のと同様な状況である。つまり手が小さいためか、クラスター和音やオクターブ和音連打の箇所などでは彼らしくなく音がばらけてしまっている。手の伸張を行うと上からのアタックが出来なくなるためか、音量のレンジも狭まってしまって、結果表現の幅も小さくなってしまっている。ポリーニ(DG)あるいはコヴァセヴィチ(Philips)のバルトークを聴いた後ではややつらい。
さて、チョンは例によって線は細いが、燃えている。
しかし、ブーレーズ&シャハム(DG)やギーレン&テツラフ(Virgin)といった曲の構造をしっかり見据えた近年の録音に比べると、いかんせん曲の見通しの悪さが気になる。特に、チョンにありがちなルバート(最初の音を伸ばして、続く音を速く弾く形)が、バルトークのスタイルになじんでいない。対位法的な扱いが多い曲だが、オケが奏でる旋律とチョンが奏でる旋律が同じ旋律であるはずなのに、リズムが全く違ってしまっているのである。曲を理解しようと思って聴く場合、この録音はちょっとオススメしにくい。
勿論、いつものチョンなので、彼女の一心不乱な集中力を聴きたい方にならオススメ。なお、チョンと同じく「熱演スタイル」をとった録音には、みどり&メータ(Sony)やスターン&バーンスタイン(Sony)があるが、この中では多彩な音色で弾きこなしている若き日のスターンが最も説得力がある形に仕上がっている。