このタイトルからだと、日本海海戦に臨む際のバルチック艦隊事情を紹介するものと思ってしまう。ところが、本書が記述するのはピョートル大帝以前にさかのぼるロシアの海洋政策の歴史だ。その歴史から生まれたバルチック艦隊は、日本海海戦のはるか前から存在し、日本海海戦でその歴史を閉じる。バルチック艦隊の敗北は、歴史的必然性を帯びていることが読み取れる。
日本海海戦の詳細な経緯への期待を強く持って本書を開いた意味では、タイトルに裏切られたとの思いがあるが、海洋政策から見たロシアの小史として興味深く読んだ。エカテリーナ二世やアレクサンドル一世の統治下がロシアの膨張期であり、ナポレオン戦争とのかかわりもあって活気のある時代だと思うようになった。
ヨーロッパの辺境にあって、アジアとも深く交わり、やがては社会主義革命を迎える、入り組んだロシアの歴史を知る意味で得るところが多かった。