NEI政府主席ティフラーの命を受けGAVOKに協力を呼び掛けるべく使者として奮闘するエラートの活躍とラール人が中性子化作戦の観測基地に選んだ惑星ドゥームでの原住種族とテラナーを巻き込んだ三つ巴の暗闘を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第414巻。本巻の執筆者は豪華な大御所の競演ダールトンとマールです。私が考えますに長寿シリーズの秘訣は一話限りの単発キャラクターと中長期的に登場する新レギュラーの構築にあると思います。本書に初登場するGAVOK反乱組織のリーダーのムトルマン・スセルプもスター性が感じられ今後の活躍が期待されます。唯反面あまりにもスターが多すぎて何時の間にか消えて行く人がいるのは淋しい事で、そう言えば宇宙一の女たらしガルトが最近全く出て来なくなったなと思い出しましたので、また復活して彼の活躍する話が読めればいいなと期待しています。
『バルコンの男』クラーク・ダールトン著:‘それ’によってテラナー少年の精神と共に男の肉体に入れられ共有体となったエラートは《ノースライト》でガイアを出発し、途中ウニト人の惑星で得た情報を基に反乱組織のリーダーのスセルプが隠れているという無人惑星フォダハへと向かう。本編ではバルコン人やキュウリに似たスヴォーン人といった懐かしいキャラクターを記憶していて登場させられるのは今やダールトンだけなのではと感嘆させられます。エラートの意外な運命については誠に気の毒ですが、でも強い彼の事ですからきっと大丈夫でしょう。そして彼と運命を共にする精神のみの少年アシュドンは永遠に十二歳のままなのでしょうね。『ヴォルクロヴの偶像』クルト・マール著: アルクル=ベータ近傍の惑星ドゥームに住むテラの白蟻に似た昆虫種族ヴォルクロヴをラール人から守ろうと協力者を装うケロスカーとコンセプトのヴァンネは策略を立て一時は成功するが、やがてラール人の過激な一派が強引に攻撃に打って出る。本編ではロボットのヴァリオ=500が異種族の警戒に遭って苦労しながらも努力の末に相互理解を得られて昆虫女王との謁見に成功するドラマが感動的です。しかしこの平和は束の間に過ぎずまだラール人との戦いが終わった訳ではなくて危機的状況を示すラストが堪らなく心配で、どうか彼ら種族が無事であります様にと祈る気持ちで胸が一杯になります。
本巻の翻訳者、林啓子氏のあとがきはピアノ・コンクール全国大会に向けての充実した‘決戦の夏’の思い出とその努力の成果を喜びと感謝の気持ちを込めて語り、最後に苦笑いの落ちで締め括られています。次巻からは再び舞台が変わってローダンとバルディオクの手先の具象との戦いが更に熾烈化する模様です。それにしてもこの目まぐるしい展開の変化について行って読む方も大変ですが、30年以上前の当時の作家チームの方々も書くのに相当苦労されたでしょうね。それだけ作家陣が充実して脂が乗っていた証でもあると思います。何時もにも増して長く感じるこのサイクルも一歩ずつ少しずつ前進している訳ですので、ひたすらシリーズを信じてこの先も果てしなく読み続けましょう。