小曽根真が鍵盤を操るしなやかなタッチは非常に有名なわけですが、この『Ballads』ではその効用が集約されており、当に陶酔へ導いてくれます。
静謐な曲が多く、小曽根氏の繊細な濃淡の表現には、余韻の中へ疲れが溶けてしまうような浸透力がありました。ちょうど余白に久遠を感じさせる水墨画のように、
行間を聴かせる音楽、これぞ小曽根氏のバラードの美しさなんですね。他の楽器との間合い、呼吸、全ての構図が美しく、またコンポジションのデザインも緻密で
素晴らしい音の絵が立ち上がります。小曽根氏のロマンチシズムの結晶が見れた気がします。
2「ア・マン・オン・ア・コブルド・ストリート」、3「マイ・トゥモロウ」、4「エイジアン・ドリーム」、5「ミスト」この流れは旋律の美しさが静かに咲き、実に素晴らしいです。
9「ホエア・ドゥ・ウィー・ゴー・フロム・ヒア」のマイケル・ブレッカー(ts)と小曽根氏のピアノだけのナンバーもお勧め。ほれぼれする静謐に淡く慎ましい美しさで旋律が弾かれてゆきます。
アサヒ黒生CM曲の11「ウィー・アー・オール・アローン」や1「シー」などスタンダードポップスは、展開に新たな景色をつけてゆく小曽根真のインテリジェンスとロマンチシズムが分かりやすく伝わります。
仕事帰りの車の中、疲れが静けさの中に沈んでゆくようです。