本作に詰め込まれた情報量は過剰と思えるほど膨大で、そのそれぞれが連関してテーマである「天皇システム」のメタファーになっています.これでもかというぐらい言及されているキーワードが「ネットワーク」ですが、例えばその一つ「セイント計画」(国家行政を物理的には解体分散、電子ネットワーク上に再統合して中央集権)など今の言葉でいえばまさにクラウド国家の具現化でありその先見性に驚きます.本書の単行本の刊行は1991年であり昭和天皇崩御が1989年ですが本作の制作期間は5年との事ですので時代と完全にシンクロしています.作品と時代とのシンクロは野阿梓さんの他の著書(例えば「伯林星列」)にも見られ、SFエンタテインメントの体裁ではありますが、広いパースペクティブをもって現代世界と真剣に切り結んでいる作品だと思います.ただ、完成度というか、いち小説としての全体的な統合性にはちょっと欠けるように思え、星四つとしました.