ヘルムート・リリングは、バッハアカデミー版の監修にも携わるバッハ研究の第1人者。音楽家としても、指揮を振ったり、あるいはオルガンを弾いたりと、精力的に活動している。このCDは1977年に録音されたもので、教会暦の各時期ごとに2~3曲、計15曲が収録されている。バッハのオルガンコラール(コラール前奏曲)は作品数が多いにもかかわらず、数曲を除いて日本ではほとんど知られていないので、CDやコンサートで何曲か聞くことはあっても、こうして集中した形で聞くことはないだろう。
リリングの演奏は非常に学術的で、かつ厳格。ストップ選択にしても演奏自体にしても派手な演出は一切しないが、そのことで曲自体の魅力が充分に引き出される。コラール前奏曲は本来、礼拝で使うコラールの旋律を参列者に示すために作曲されたものなので、その旋律を明確に伝えなければいけないのだが、リリングはこの点についても当然のごとく配慮している。コンサートでの演奏とは違う、バッハが意図したことを正確に読み取ることで生まれた演奏だ。