この曲集とほぼ同じ内容のCDは、現在手に入るものではグールド以外にニコラーエワのものしかありません。聞き比べるとその違いがよくわかる、というより同じ楽譜を同じピアノで弾いてもこんなに差があるものかと驚かされます。もちろん聞き手の好みがあるので、どちらがいいかと断言するのは無理で、どちらもお聞きになることをおすすめします。特にあなたがピアノを弾く場合には。
グールドは二声のメヌエットやフーガのように音符の少ない曲はむしろゆっくり、そしてどちらかと言えばスタカート気味に弾き、ピアノを通してつぶやいているような不思議な雰囲気を作り出します。一方三声、四声のように音符の多い曲は、逆にきわめて急速に弾いています。そうすることで、普段は目立たない隠れたメロディーがはっきり浮かび上がってくる独特の効果があります。
確かに練習曲ではあるのですが、こういうふうに弾いたら多分ピアノの先生には怒られ、コンクールにも通らないでしょう。ですが、天国のバッハはむしろニコラーエワよりグールドに良い点数をくれる気がします。ピアノ芸術の一つの極限の形として、ぜひ一度はお聞き下さい。