オーケストラも合唱も小編成ですので、バッハが描くフーガの輪郭が明確になり、音楽の構造(骨組み)を目の前に立体的に表わしてくれるような演奏です。
オランダ・コレギウム・ムジクム・バッハ合唱団は10数名のメンバーで構成されていますが、ダブル・コーラス(8声)の負担を微塵にも感じさせない名演です。軽やかで、透明感のある声質を持っています。
クイケンをコンサート・マスターとする古楽器で編成されたラ・プティット・バンドは多くの名演を残しているアンサンブルですので、バッハ畢竟の名作といわれるこの「ロ短調ミサ」の演奏の組み合わせとしてはベスト・カップルと言えるでしょう。
指揮者のレオンハルトは、御存知のように高名なチェンバロ奏者であり名オルガニストゆえ、「ロ短調ミサ」の持つ横糸とも言うべき、各合唱パート、各楽器の旋律の流れを浮かび上がらせながら、縦糸とも言えるハーモニーの変化を提示しており、厳しさの中に温かみのあるバッハの宗教曲を再現したと言えるでしょう。
アルト・パートを歌ったカウンターテナーのルネ・ヤーコプスの演奏が素晴らしいと思いました。有名なアリア「父の右に座し給う者よ」を豊かな響きを伴い、敬虔な感情を声にのせています。名歌手の誉れの称号は伊達ではありません。