約2000年前、新しい宗教観を持つ人がいた。特に貧しい人々を愛し、彼らから搾取する聖職者を批判した。師と仰ぐ弟子たちがいた。弟子にはならずとも彼を応援する人たちもたくさんいた。
一方、既得権益に胡坐をかく聖職者や、自分の価値体系を否定されたと感じた保守的な信者は快く思わなかった。無実の罪を着せ、磔という残酷な刑に処すよう、当時その土地を支配していたローマの役人をそそのかした。彼を嫌う大衆の数に押され役人はしぶしぶ実行した。
キリスト教徒でないと分からないという考えもありますが、貧しい人、差別される人、病気に苦しむ人に温かい言葉をかけ、励まし、勇気づけた人が、何故こんな惨い目に合わないといけないのでしょう。キリスト教徒を名乗る人の中にも、当時の腐敗した聖職者と変わらない考えの人もいます。仏教徒であろうと無宗教であろうと人間の心を持つ人ならば、人々を愛し真実を話したために罪なくして処刑された人が実在したことを知れば、涙なくしてこの曲を聴けないと思います。
レオンハルトは古楽器を用い、歌唱はすべて男声の当時の様式を出来るだけ再現しています。ボーイ・ソプラノは上手ですがやはり子供の歌唱です。大人のソプラノには劣ると感じました。バッハが今の時代に生きていたら、現代楽器と女声を含めた演奏とどちらを好んだかと考えます。現在の流行は古楽ですが、それはバッハの時代の制約であり現代のものは改良と見るか、あるいはそれが本来の姿で近代のものは逸脱と見るか、いろいろ意見のあるところだと思います。
もしも、レオンハルトのヨハネ受難曲にも興味があるなら、マタイとヨハネの両方を収めたCD5枚のセット『
Bach: Passions』がお買い得です。