2001年10月 スイス、バーゼルにてライヴ録音。シフのライブラリに詳しい方はご存知だと思うがこのゴルトベルク変奏曲は2度目の録音である。最初の録音は、1982年にデッカで収録されていて、当時グールド以来のバッハ解釈の登場といった感じで高く評価されたわけなのだが、こちらの演奏を聴くとその評価はやや早かったと感じる。こちらのゴルトベルク変奏曲こそ、グールド以来の出来だと思う。もはや前録音とは比較にならないほどに別格のゴルトベルク変奏曲である。
フレーズ、タッチ、そして響きがこの上もなく自然である。その自然な音にいつまでもいつまでも浸っていたくなる。そんなゴルトベルク変奏曲は今までなかったと思う。強く意思表示する演奏はグールドの2つの演奏を初め、多くのピアニストが取り組んだグールド以後のゴルドベルク変奏曲のカタチだったと思う。それがこのシフの対極に居る柔らかで自然でしなやかな解釈で大きく変わった。そういう大変意義ある演奏だとぼくは思う。
そしておそらくシフはこれからECMの優れたスタッフと共に残りのバッハの傑作を残してくれるだろう。それはバッハを愛する者にとって例え様がないくらい待ち遠しい贈物になるだろう。