この巻の見所はなんと言っても瑞垣の存在である。彼は、圧倒的なまでの存在感を放っている。天才・門脇の“親友”であり、名門横手の5番を務める彼。しかし、彼は自分の限界を見極めている。いくら努力しても門脇(=天才)にはなれないことに苦しみ、彼を羨望するとともに憎悪する。偽悪者を装って本心を覆い隠す彼の姿に、野球に対する他の誰よりも熱いラブコールを私は見る。
彼の物語は決してサイド・ストーリーではない。言うなれば、彼は豪の影なのである。天才・巧を相手に葛藤する豪が、なり得たかもしれないもう一人の彼がすなわち瑞垣なのである。かつて自分を動揺させた瑞垣の言葉を思い出し、豪は語っている。「瑞垣さんに言われたことを思い出して……なんか、すごいこと、言われたんだなって」。豪を潰そうとすると同時に、激励する瑞垣。「お前は俺になるな」彼はそう言っているのである。
私はこの巻を、シリーズ中一・二を争う傑作として推薦することを躊躇しない。