ストリート・チルドレンとして育った青年サンドロ。彼が引き起こしたバスジャック事件の顛末を捉えたテレビ映像と関係者の証言を交錯させながら、ブラジルの子供たちが置かれている暴力と貧困の悲惨な状況が克明に描き出された記録映画。「ストリート・チルドレン」と呼ばれる子供たちの存在を無視しようとするブラジル社会への告発とも言える内容だ。
監督のジョゼ・パジーリャが自分の足で取材して回った背景調査の内容や、関係者の声によって、バスジャック映像の後ろに隠れた真実、何よりマスコミが何も語らなかったサンドロを中心に据えた「事実」が暴かれている。Special featureの「メイキング」と「未使用インタビュー」は、このDVDにとっては本編と同等程度にまで重要な「記録作品」といえる。顔にぼかしが入っていたり、覆面、眼出し帽姿の人物も登場。誤魔化さない真の映像、真の言葉を見聞きすることが出来た。「人質」「18歳以下の子供たち」「警察官」「プロの強盗」「社会学者」「サンドロの叔母」「ソーシャルワーカー」。通常では考えられない登場人物にも語らせた意義は大きい。
ソーシャルワーカーの最後の言葉「サンドロはマスコミに利用されただけ」は、この作品自体にも向けられた怒りそのものでもあろう。このDVDを観た私自身にも向けられた怒りとしても受け止めた。大きな後ろめたさが心に残った。