第3巻は、運命の1789年7月14日の前日から、パンを求めるパリの女たちの圧力に屈して国王がヴェルサイユからパリに移るまでを扱う。
本巻の約半分は7月13日〜14日に割かれる。なぜバスティーユが民衆蜂起の最大の山場となったのか、そもそもなぜ14日になったのか、そして民衆はどのような犠牲を払ったのか、教えられることが多く、かつ刻一刻と変化する情勢を前にして自分もその場にいるかのような臨場感を覚える。
しかし、7月14日の蜂起が革命となるか、単なる暴動と位置づけられるかは、14日の民衆の勝利だけでは決まらなかった。王が16日にパリを訪問し、8月に議会が封建制廃止を決議し、人権宣言を採択してもだ。軍隊という実力を持つ王がいつ革命弾圧に転じるともかぎらず、実際王の態度は曖昧であり続ける。
そこで、王の権限をできるだけ削ぐべしとする愛国派と、王の権威をもって革命を安泰にすべしとする王党派に議会は割れ、論戦は空転。政治も停滞。遂に台所を預かるパリの女たちがパンを求めてヴェルサイユに押しかけ、男たちの駆け引きを吹き飛ばし、国王を革命の捕囚としてしまうのは、突発的とはいえ痛快事だ。
王の権威のお墨付きを求めるミラボーの信条に、亡父との関係が投影していることが明らかになる等、歴史上の人物の内面が生き生きと描かれるのは前巻までと同じ。パリやヴェルサイユの天気まで筆が及ぶことも。