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これを考える時、私は江戸川乱歩と横溝正史と言うニ大巨匠の対比に思いを巡らせてしまう。初期の短編で本格派としての手腕を振るいながら猟奇性の強い長篇を書かざるを得なかった乱歩と複雑な人間関係の背後に巧妙な伏線を幾重にも張り巡らせ本格長篇をものにした正史。ドイルは明らかに乱歩型の作家だ言える。(無論、乱歩は猟期的作品であれだけの成功を収めなかったら横溝作品に匹敵する本格長篇を残していたかも知れないが)
いずれにしてもドイルは短編における単発のトリックや謎においては見事な輝きを見せるが、それらを巧みに織り上げて巨大なモニュメントにする技巧には欠けていたのかも知れない。ホームズシリーズの四つの長篇を見る時、そこには散発的な謎やトリックがちりばめられてはいるものの、それが有機的に結びついて巨大で複雑な難事件には発展していない。この四作はあくまで冒険小説であって本格ミステリーではないのである。それゆえに短編で神業的な推理の切れを見せるホームズが長篇では輝いていない。熱狂的なシャーロキアンが長篇をあまり高く評価しないのはそのせいなのだろう。彼らはあくまでホームズファンであって、コナン・ドイルファンではないのかも知れない。
だが、これらの長篇は決して駄作ではない。ホームズ作品としてどうか?本格推理としてどうか?ではなく、冒険小説として見る時、やはり、これは読みごたえのある名作の一つなのだ。
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