<1巻〜31巻の総評価>
このシリーズも序盤は「予想は裏切り、期待は裏切らない」だったが、中盤からは「予想は裏切り、期待も裏切る」という、単なる先延ばし漫画に成り果てた。
「グラップラー刃牙」は格闘漫画として完成されていたし、この「バキ」も序盤の死刑囚登場のインパクトは凄まじいものがあった。実際、独歩の手首をワイヤーで切断したり、爆薬を使ったりするのを見ると、「そこまでやるか!」と戦慄したほどだ。しかも、そんな死刑囚たちを狩る怪物、オリバの登場など、先が読めない展開にワクワクした。
しかし中盤辺りから、勇次郎レベルの戦闘力の持ち主かと思われていた死刑囚たちが弱体化していく。戦闘も「花山vsスペック」戦以降は、ちょっと小競り合いをしたらどちらか逃亡(or邪魔が入る)というパターンの繰り返しに。
特にドリアンと柳の結末はヒドすぎる。本来、ドリアンは海王以上の拳法の達人のはずなのに、まともに対決すると何故か独歩に手も足も出ず。あげく逃亡がしつこ過ぎて、着地点を見失った挙句グダグダな終わり方に。
一方、柳にしても、もともと暗器使いなのに「武器に頼っているからダメ」という理屈で、本部に遅れを取るという珍妙な展開に(その理屈が通るのは『餓狼伝』の鞍馬のような、「武器を使いこなせていない素人」相手の時だけだろう)。それに柳の鎖鎌の技量があれば、ジャングルジムの前の本部だけを狙うことも可能のはず。何であそこで諦めるのだろうか。ジャングルジムの中に入ったワケでもないのに。
さらにそこへ何の必然性も無く勇次郎が乱入して、メチャクチャな理屈でメチャクチャな幕引きに(笑)。どうして因縁のライバル・渋川と決着を付けさせなかったのか?渋川に至っては柳以外の死刑囚と接触すらしていない(オリバは除く)。
あげくドイルもシコルもヘタレ化し、はっきりとした結末も無いままに、中国の武術大会「擂台賽」へと話が進む。
オリバvs書文、勇次郎vs郭は多少なりとも盛り上がったが、結局、チートパワーの前に技術は負けるというオチ。おまけに今後の予定としてあった「世界中にバラ撒かれた範馬の血統編」の伏線として出したであろうキャラ・範海王がその名前から早々に読者に予想されたせいで、あっさりとアライjrに瞬殺→退場(笑)。
そしてそんな鳴り物入りで登場したアライjrも金的でバキに瞬殺→退場(笑)。
ここに「予想は裏切り、期待も裏切る」板垣流が完成した!
確かに「その場」のインパクトは強いし、先の読めない展開や強烈なキャラクターたちには期待してしまうだけの魅力が備わっている。しかし回を重ねる毎に「読者の予想を裏切る事」だけが目的化していき、前後の整合性や伏線どころか、何より「読者の期待」を無視するようになってから、この作品も凋落していく。