著者は1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学医学部卒業後、解剖学者として活躍し、95年に東京大学医学部教授を退官後は、北里大学教授、東京大学名誉教授に就任した。また数多くの話題の書を著し、『養老孟司の“逆さメガネ”』『まともな人』『いちばん大事なこと―養老教授の環境論』『唯脳論』などがある。
本書の魅力は、容赦なく社会を批判する痛快きわまりない養老節にある。「現代人がいかに考えないままに、己の周囲に壁を作っているか」、つまりあの人たちとは話が合わないという「一元論」が「バカの壁」の元凶であり、アメリカ対イスラムの構造や日本の経済の停滞などもすべてこの理論で説明されるという。一方で、イチローや松井秀喜、中田英寿の際立つ能力を、脳の構造で解明してみせたり、「学問とは生きているもの、万物流転するものをいかに情報に換えるかという作業である」という骨太の教育論をも展開している。解剖学者の真骨頂を堪能できる価値ある1冊である。(田島 薫)
現代人はいつの間にか、自分の周りに様々な「壁」を作ってしまった。例えば、情報は日々刻々変化し続け、それを受け止める人間は変化しないという思い込みや、個性や独創性を礼賛する風潮などはその典型例で、実態とは「あべこべ」だという。
「バカの壁」は思考停止を招く。安易に「わかる」「絶対の真実がある」と思い込んでは、強固な「壁」の中に住むことになると戒めている。
(日経ビジネス 2003/06/02 Copyright2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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98 人中、83人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
誤解されやすいのではないか,
By Yeemar (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: バカの壁 (新潮新書) (新書)
誤解されやすいタイトルである。〈「話せばわかる」なんて大うそ!〉という帯コピー、それに、カバー見返しの〈いつの間にか私たちは様々な「壁」に囲まれている。それを知ることで気が楽になる〉という紹介文は、著者の意図を理解して書いたのかどうか疑問だ。本書は決して、「どうせ『バカの壁』があるのだから、他人を理解なんてできない。ああ、気が楽だ」と、気楽にしてよいと主張するものではない。本書の主張はこうである。「人はだれしも、世の中には『標準』『常識』があると信じ込んでいる。意見の異なる人を見ると『あいつは非常識だ』と見なして理解しようとしない(『バカの壁』のなせるわざ)。それでいて、自分は標準から外れて個性的になりたいと努力したりする。ところが、われわれの肉体はもともと非常に個性的であって、個性的になりたいというのは意味がない。むしろ反対に、もともと個性的なわれわれは、他の人々、他の民族との間に共通理解をさぐる努力をしなければならない。『自分の信念だけが正しい』と言うのでは共通理解への道は遠い。『人間ならふつう、こういうことをされたらこう感じるはずだ』というように、人間の身体感覚を基本に普遍的価値を探るべきではないか」 〈気が楽になる〉どころか、厄介な宿題をつきつける本だ。しかし不安も残る。「人間であればこうだろう」(p.202)という判断をするのも個々の人間だ。「人間ならば浮気をするのも仕方ない」と考える人間と、「人間ならば浮気などできないはずだ」と考える人間との間には、やはり理解は成り立たないのではないか? 全体に、精神訓話のような部分も多い。また、本書は、著者の話を編集部が文章化したものだそうだが、これでは一字一句に著者が責任を持てない。編集者の「バカの壁」で著者の話の意図が曲がっているかもしれないではないか?
151 人中、120人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 2.0
喜び勇んで買って読んでみたものの,
By アマゾン太郎 (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: バカの壁 (新潮新書) (新書)
養老孟司のファンなので、新書創刊と同時に買って読んでみたものの、内容にはいささか拍子抜けしました。 「語りおろし」ということもあってか、養老孟司自身の文章の味わいもどことなく薄れており、 内容も以前どこかの本中で語られたものの繰り返しです。 逆に言えば、「語りおろし「や「総花的内容」も、新創刊新書にふさわしい「わかりやすさ」「とっつきやすさ」かもしれません。 いずれにしても、ちくま文庫などでみられる「論調の鋭さ」というよりは、
36 人中、29人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
タイトルは「養老の思うこと」の方がぴったりくる,
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レビュー対象商品: バカの壁 (新潮新書) (新書)
養老氏の独白を文章化したものであって、養老氏の思うところがつらつらと述べてあります。 基本的に現代社会の危うさを啓発したいとの思いがあるようです。 批判の理由付けとなっているのは養老氏自身の経験(常識)です。 だから、戦前戦後といった養老氏と同世代の方は彼の考え方に共感するかもしれませんが、その世代でない私にとっては、そうですねえ・・・ たとえ共感できないとしても、違った時代を生きた先輩がどう考えているかを知るのは今の時代を知る・自分を知る、という意味で結構重要なんじゃないかと思うので、一読してみるといいと思います。短いので簡単に読めますよ。
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