ジョン・フィルシアンテが復帰しての第2作目、2002年リリースの
のアルバムです。
『Californication』という作品は、“枯れ”がアルバムの
大きな要素になっていました。それはバンドが大きな危機に面して、
不安を抱えての制作であったことが原因であったと思われます。
しかし、そんな危機的状況で作ったアルバムが、世界中から
諸手を上げて歓迎され、バンド史上最高の成功を収めたことで、
レッド・ホット・チリ・ペッパーズは自分たちが進む方向に
自信を持ち、それが今作での“枯れ”が“深い味わい”に
変わるという変化につながっていると思います。
どちらのアルバムもジョン・フィルシアンテの色が濃く反映されて
いると思います。ジョンはどんな音楽をやっていようが、常に
どこかに寂しげな雰囲気を漂わせています。しかし、その寂しさが
前作では“枯れ”と感じられ、今作では“味わい”になったことは、
ジョン・フィルシアンテの心の充実を物語っているのではないでしょうか。
そして、ジャケットからも連想されるように、このアルバムからは
“海”というイメージが湧いてきます。バンドの活動地である
カリフォルニアの海ではあるのですが、強い日差しのリゾートを
思わせるそれではなく、生命の源である母なる海、そういった印象を
受けます。
タイトル曲『By the Way』はジョン・フィルシアンテのギターが
静かにリフを刻む上を、アンソニーの優しいヴォーカルがゆっくりと
歩いていきます。そして、突如うねるベースが入って曲調が一変します。
ドラムがグルーヴを生み出し、まさにファンクという音楽になるのですが、
不思議なことに前半の音楽と雰囲気は全く同じように感じるのです。
曲調は確かにがらりと変わるのですが、ファンクのグルーヴを叩き
だしている後半ですら、そこにあるのは“温かい愛”なのです。
ここで一つの事実を伝えたいと思います。前作を聴いたときに薄々
感じていながら、どこか認めたくないという気持ちがあり、目を背けていた
事実がこのアルバムを聴いて確信に変わりました。それは、レッド・
ホット・チリ・ペッパーズは変わったという事実です。
チンコソックスや火噴き電球などのバカ・パフォーマンスをし、
ドラック問題でどろどろになっていたやんちゃなバンドであったレッド・
ホット・チリ・ペッパーズは、ジョン・フィルシアンテが復帰した前作から、
次のステージに踏み出したのです。それはより普遍的な大衆性を獲得する
ことであり、実際ジョン・フィルシアンテ復帰後のレッド・ホット・チリ・
ペッパーズは世界的なバンドとして大きな成功を手にしていくのです。
それと同時に、どこかキワモノ的な魅力のあったレッド・ホット・チリ・
ペッパーズというバンドは失われてしまったのです。
初期の彼らのファンはとても寂しい思いをしながら、バンドの変化を
見守っていたことでしょう。自分たちの大好きだったバンドが、脱皮して
いくという事実を認めることは寂しく、辛いことです。しかし、それは
また人間の成長に伴って起こることであり、素晴らしいことなのです。
私もこのアルバムを聴いて、“もうレッド・ホット・チリ・ペッパーズは
完全に違うバンドになってしまったんだな”という感傷に襲われました。
そしてこのアルバム以後はあまり熱心にバンドを追いかけることはなく
なってしまいましたが、多くのファンに支えられているバンドをみて、
いつもなんだか寂しくも心が温かくなる感じがするのです。結婚して
新しい生活を始めた娘を見るような気持ちですかね。
そういう印象は『Universally Speaking』でさらに強くなります。
『By the Way』では“ファンク”というそれまでの自分たちの大きな
特徴をかろうじて残していましたが、この『Universally Speaking』に
至っては完全に今のレッド・ホット・チリ・ペッパーズの曲になっています。
中盤に入るロマンティックな音なんて、それまでのレッド・ホット・チリ・
ペッパーズからは想像できないものです。
『The Zepher Song』、この曲も海の匂いが凄くする曲です。抑えた
感じからサビで一気に視界の広がるような感覚、そして優しいメロディは
普遍的なラヴソングといってもよいものです。
そして、個人的にこのアルバムのベスト・ソングだと思っているのが、
『Cabron』です。もうイントロのギターから切なくて、ロマンティックで、
可愛くて、素晴らしいです。それにヴォーカルが乗っかると、なんでしょう
この癒しのオーラは。優しい日差しに照らされた、美しい海を見るような、
そんな癒しに溢れた曲です。そして、この曲がこれまでのレッド・ホット・
チリ・ペッパーズというバンドから最も遠いところにある曲でしょう。
こんなにもカラフルな極彩色のサウンドを、まさかレッチリがやるとは!
このアルバムについてのインタビューで、ドラムのチャドが、
「Very John(ジョンだね)」と答えているのですが、ジョン・フィルシアンテ
という才能が、遂に本領を発揮し始めたのがこのアルバムと言えるでしょう。
これまでのレッド・ホット・チリ・ペッパーズのキワモノ的な音楽から、
もっと大きな普遍的な愛を内包したものへ。
Reviewed by ちょっと寄り道 [音楽の旅] http://sensun.blog83.fc2.com/